『PANORAMA』本冊 日本語訳

『初級日本語 PANORAMA』の英語解説部分の日本語訳です。訳が必要ない部分(50音表や単語例、英訳付きの例文や活用表、確認問題の問題など)については、(表)や(例文1-5)や(問題1-10)とだけ表示しています。

モジュールI 音と表記編 [pp.13-38]

音と表記1. 日本語の音とひらがな [pp.15-28]

日本語の音と表記には次のような特徴があります。

1. 日本語のほとんどの音節は母音で終わる

特殊な2音(撥音[n]と促音[kk],[pp],[ss],[tt]など)を除いて、日本語の音節は全て母音で終わります。ほとんどの音節は「母音だけ」か「1つの子音+1つの母音」という組み合わせなので、一般的に日本語の音は学習しやすく発音しやすいと考えられます。

2. 日本語のひらがなとカタカナは各文字が常に特定の音を表す

日本語では「ひらがな」「カタカナ」「漢字」という3種類の主要な表記法が使われます。このうち、「ひらがな」と「カタカナ」は文字と音の間に1対1の一致が見られ、各文字が常にある特定の音節の音を表すので、表記で表されない音の変化がありません。つまり、これらの表記法の文字を覚えれば、すぐにその表記法で書かれた単語を発音することができます。

この2つの特徴を次の3つの単語を使って見てみましょう。

(単語の例1-3)

まず、前のページの単語の各音節は全て母音で終わっていることが分かります。

「母音のみ」の音節:i, e

「子音+母音」の音節:ha, wa, ta, shi 

次に、ひらがなに注目してみましょう。1と2の単語では [i] の音節の音を書き表すために「い」というひらがなが使われています。この「音節 [i]=ひらがな「い」」の関係は原則的に常に変わりません。なお、3の単語の [shi] という音節にも [i] の音が含まれていますが、これは [shi] という音節の一部なので、ひらがなとしては「し」という別の文字が使われています(音節 [shi]=ひらがな「し」)。つまり日本語の各ひらがなは日本語のある特定の音節を表し、各音節はある特定のひらがなで表記されるわけです。各ひらがなの音を学習すればひらがなで書かれた単語が発音できるようになるわけですから、これは大変便利な表記法だと言えます。例えば、「house」という単語はひらがなでは「いえ」と書きます。1と2の例から「い」は [i] を、「え」は [e] を表すということが分かりますから、日本語の house の発音は /ie/ だということが分かります。

[ここで、練習編の練習1をしてみましょう。]

では、まず日本語で使われる5つの母音とそのひらがなを見てみましょう。各ひらがなが、それが表す母音の音の下に書かれています。

(母音の表)

それぞれの音は下の単語の下線部分の音と大体同じです。

(英単語の例)

[*16ページ脚注]

英語の /u/ の音と違い、日本語の「う」は非円唇母音です。この音を発音するためには、下線の母音の音を唇を丸くしないで発音してみてください。

次に1つの子音と1つの母音からなる音節と音節としての [n] を見てみましょう。ひらがなが、それらが表す音節の下に書かれています。「*」は次のページ追加の解説があることを表しています。

基本音節(ひらがな)

(50音表)

下の音は英語と違うので、発音する時は特に注意して下さい。

  1. 「く」「す」「つ」「ぬ」「ふ」「む」「ゆ」「る」の /-u/ の音は、母音「う [u]」と同じで、唇を丸くしないで発音します。
  2. 「し」は「 sheep」や「chic」の音です。「seep」や「seek」の音ではありません。
  3. 「ち」は「cheese」や「cheek」の音です。「tease」や「teak」の音ではありません。
  4. 「つ」は「tsunami」や「it’s oozing」の音に近いです。「tune」「tool」の音ではありません。
  5. 「ふ」は「hula」や「who」、また「food」や「fool」にも近い音です。英語では [hu] は一般的に「hue」や「human」の音を表しますが、「ふ」は異なった音なので、混乱を避けるために、このひらがなはローマ字表記では [fu] と書かれます。ただし、上の歯を下唇に当てて発音する「food」や「fool」の音と違い、日本語の「ふ」は下唇に上の歯をつけないで、上唇と下唇の間から息を吹き出して発音します。
  6. 日本語の子音 /r/ は基本的に英語の /r/ と異なります。日本語の場合は、舌先が上顎に軽く触れるように発音します。これはアメリカ英語の「butter」や「ladder」のはじき音や、スペイン語の「pero」のはじき音 /r/ の音と同様です。(ただし「perro」の巻き舌の /r/ の音ではありません。)
  7. 現代日本語では、「を」の子音 /w/ は省略されて「お」の音と同じように発音されることが多いです。
  8. 音節の [n]「ん」は「run」や「ten」の音を表すのが基本ですが、後に続く音によって*「sing」「samba」の音を表すこともあります。日本語母語話者はこれらの音を自然に区別しないで発音するので、全て「ん」で表記されます。

[ここで、練習編の練習2-1をしてみましょう。]

[*18ページ脚注]

母語話者は「ん」の異音を意識的に区別して発音するわけではないので、この違いを意識しすぎる必要はありません。しかし、後続の音によって、以下のような規則が存在します。

  • /t/, /d/, /n/ の音の前では「run」の音になる。
  • /p/, /b/, /m/ の音の前では「samba」の音になる。

上記以外の場合は「sing」の音、またはそれに近い喉の奥で調音される鼻音になる。

前のセクションで、ある特定の音節の音はある特定のひらがなで表され、その一致は基本的に恒常的であるということを勉強しました。しかし、これには少数の例外があります。その1つは [-ei] と [-ou] の音で、これらには文字と発音の間で次のような不一致が起こります。

-ei 規則:最後の [i] が通常の「い」の音ではなく、直前の母音 [e] を伸ばした音として発音される。 例:せんせ [sensei] teacher 実際の発音 /sensee/

-ou 規則:最後の [u] が通常の「う」の音ではなく、直前の母音 [o] を伸ばした音として発音される。 例:こうえん [kouen] park 実際の発音 /kooen/

なお、他の長音にはこのような不一致は起こりません。/-aa/, /-ii/, /-uu/ はひらがなの文字の通りに、 [-aa], [-ii], [-uu] と発音されます。

(単語の例1-3)

また、まれなケースですが、/-ee/ と /-oo/ の音を発音のまま表記する語があります。

(単語の例4-5)

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[確認問題] SW1-2

A. 下の各単語を正しく書き表しているひらがなを a~l から選びなさい。

(問題1-6)

B. 下の各単語にはひらがなと実際の発音の間に不一致が起こる部分が存在します。不一致が起こるひらがなに下線をしなさい。

(問題1-4)

C. 次の各語をひらがなで書きなさい。

(問題1-10)

D. 次の表は日本語の家族用語の表です。aはより一般的な用語で、bは自分の家族に言及する時に使われます。

  1. 各語をひらがなで正しく書きなさい。
  2. ひらがなと実際の発音との間に不一致がある場合は、不一致が起こるひらがなに下線をしなさい。

(問題1-6)

 

[ここで、練習編の練習2-2をしてみましょう。]

前のセクションで勉強した子音の中で /k/, /s/, /t/, /h/ は無声子音(声帯を振動させずに調音される子音)ですが、これらの子音で始まる音のひらがなの右上に「゛」をつけると、対応する有声子音(声帯を振動させて調音される子音)/k/→/g/, /s/→/z/, /t/→/d/, /h/→/b/ を表すことになります。(音声学的には /b/ の無声子音は /p/ で /h/ ではありません。この /p/ の音は /h/ で始まる音のひらがなの右上に「゜」を追加して表します。)

濁音(ひらがな)

(表)

  1. 「じ」と「ぢ」はどちらも「jeans」の音を表します。「zeal」や「dean」の音ではありません。書く時はほとんどの場合「じ」が使われます。
  2. 「ず」と「づ」はどちらも「zoo」の音を表します。「June」や「do」の音ではありません。書く時はほとんどの場合「ず」が使われます。

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[確認問題] SW1-3

「゛」を追加して、次の単語を正しく書きなさい。

(問題1-10)

[ここで、練習編の練習2-3をしてみましょう。]

ほとんどの子音を含んだ音節は「子音 + 母音」という組み合わせです。しかし、/i/ の音で終わるひらがなには、半母音 /y/ で始まるひらがな(や、ゆ、よ)を伴った「子音1 + 半母音 /y/ + 母音」という1音節の組み合わせが存在します。この2文字の音は次のようになります。

ki + ya → kya ki + yu → kyu ki + yo → kyo

shi + ya → shya → sha shi + yu → shyu → shu shi + yo → shyo → sho

これらの音は、[-i] のひらがなに小さい [y-] のひらがな「-ゃ、-ゅ、-ょ」を後続させて表記します。2文字で書きますが、音の長さは他の音節と同様に1拍です。下で各拗音の書き方をチェックしてみましょう。

拗音(ひらがな)

(表)

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[確認問題] SW1-4

小さい「や、ゆ、よ」を適切な位置に追加して、下の単語を正しく書きなさい。

(問題1-8)

[ここで、練習編の練習2-4をしてみましょう。]

下の2語を見てください。1語目は「来る」の過去形、2語目は「切る」の過去形です。

(単語の例1-2)

この2語の音は似ていますが、後者を発音する時は、「き」の音を発音した後で、その後に続く「た」の /t/ の音を出す準備をした状態で音を止め、この状態を1拍分保ちます。結果として、最後の母音を発音する前に、子音(ここでは /t/ の音)が通常の2倍の長さになります。(英語ではある語が子音で終わり、次の語が同じ子音で始まる場合に、日本語の促音に似た調音になります。例えば「profit target」は「った」の音に大変近いです。)/t/ の子音が1拍分長く保たれるので、上の2語の長さは異なり、[kita] は2拍、[kitta] は3拍になります。表記としては、子音が1拍分保たれる [kitta] の2拍目は小さい「つ」で記されます。他の例も見てみましょう。

(単語の例3-5)

例1と2から分かるように、促音の有無で単語の意味が大きく変わることがあります。促音を含む語は注意して発音しましょう。

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[確認問題] SW1-5

A. 小さい「っ」をどこに使うかに注意して、下の単語をひらがなで正しく書きなさい。

(問題1-7)

[ここで、練習編の練習2-5をしてみましょう。]

B. 下は日本語の1から10、100、1,000、10,000の数字です。今まで勉強したことを使って、それぞれの数字をひらがなで正しく書きなさい。

(問題1-13)

[ここで、練習編の練習3-1をしてみましょう。]

C. 下は日本語の曜日の表現です。今まで勉強したことを使って、それぞれの語をひらがなで正しく書きなさい。

(問題1-7)

[ここで、練習編の練習3-2をしてみましょう。]

D. 下は日本語の位置を表す表現です。今まで勉強したことを使って、それぞれの語をひらがなで正しく書きなさい。

(問題1-11)

[ここで、練習編の練習3-3をしてみましょう。]

E. 下はよく使われる挨拶表現です。今まで勉強したことを使って、それぞれの挨拶表現をひらがなで正しく書きなさい。

(問題1-8)

[*26ページ脚注]

この /wa/ はひらがな [ha] を使って書いてください。これら2つの表現での /wa/ は主題を表す助詞で、/wa/ と発音されますが、ひらがなは [ha] で表記されます。この助詞については文法編の42ページを見てください。

前のセクションで、「ん」と「っ」を除いた日本語の全ての音節は母音で終わると勉強しました。しかし、実際に話す際には、「子音+母音」の組み合わせの音節で、母音が無声化する(声帯を震わせないで発音する)ことがあります。例えば、下の単語の下線の母音は無声化する傾向があります。

(単語の例1-6)

無声化が起こる母音は /i/ と /u/ だけで、一般的に、以下のような場合にのみ起こりえます。

  • 無声子音 /k/, /s/, /t/, /p/, /h/ のどれかが /i/ か /u/ の直前にあり

加えて、

  • 無声子音が /i/ か /u/ の直後に続くか、
  • 後ろに何も続かない場合。(文の発話の際は、文中の各単語の語末ではなく文末を指す。)

原則的に上の環境下以外では無声化は起きません。例えば、上の例での5と6には無声化していない /i/ と /u/ があります。これは後ろに有声音が続いている(5の /i/ と6の2つ目の /u/)、または無声子音が直前にない(6の /i/)という理由です。

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[確認問題] SW1-6

無声化する母音を表すローマ字表記部分に下線をしてから、各単語を発音してみなさい。

(問題1-6)

[ここで、練習編の練習4-1をしてみましょう。]

日本語はストレスアクセント(音の強弱)ではなく、ピッチアクセント(音の高低)を使います。強弱アクセントを使う言語の母語話者には音の高い部分が強く聞こえるかもしれませんが、一般的に日本語母語話者は各音を一定の強さで発音します。例えば、日本語の単語「津波」は、英語で使われる場合は「な」に強勢を置いて発音されますが、日本語では、/tsu/ の音が低く、/nami/ の音が高く発音されます。音の強さは各音節とも同じです。語によっては「雨」(/a/ 高 /me/ 低)と「飴」(/a/ 低 /me/ 高)のように、音の高さの違いで意味が変わるものもありますが、音の高低は前後の要素や地域差によっても影響されるので、意味の決定には文脈も大切な要因になります。

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[確認問題] SW1-7

次の語は英語でも使われるようになった日本語の単語です。強弱アクセントではなく日本語の高低アクセントを使って発音してみなさい。

(問題1-4)

[ここで、練習編の練習4-2をしてみましょう。]

音と表記2. 外来語とカタカナ [pp.29-34]

現代日本語では、西洋諸言語(特に英語)の語を訳さずに使うことが珍しくありません。食べ物の名前(hamburger, sandwich, spaghetti など)や電子機器に関する単語(radio, computer, digital camera など)は特によく使われます。

(カタカナ語の例1-6)

しかし、上の表から分かるように、これらの語が使われる場合、基本的に次の2点で日本語への適応が見られます。

  1. 音は可能な限り日本語の音節規則に沿った形で発音される
  2. 表記は「カタカナ」という表記法が使われる

日本語のほとんどの音節は母音で終わるため、元の言語では子音で終わる音節であっても、外来語として日本語で使われる場合は、日本語の音節規則に沿って、一般的に子音の後に母音を挿入して発音されます。例えば、1から6の例では「2. sandwich」と「5. digital camera」の下線の音の後には、それぞれ /o/, /i, /u/ の母音が挿入されています。

また、語末の子音に起こる他の変化として、「-er」に見られる長音としての扱いがあります。例えば「1. hamburger」と「5. computer」の「-er」に当たる音は、「母音+子音」ではなく、長音として扱われています。(語末の「-or」と「-ar」も同様に扱われます。)

さらに、元の語に母音がある場合でも、日本語の音節規則に沿って変化することがあります。例えば「1. hamburger」は英語では全て別の音ですが、日本語で外来語として使われる場合は全て同じ音として発音されます。逆に「6. digital camera」の下線部は英語では同じ音ですが、日本語では別の音として発音されます。

このような様々な変化のために、英語母語話者であっても、日本語で使われる英語からの外来語の元の語が発音からは分からないという場合も少なくありません。ただし、西洋諸言語からの語が多く使われるようになったことで、日本語の音にも影響が見られます。例えば、「3. Spaghetti」の /ti/ の音は、これらの外来語の影響で日本語でも使われるようになった音です。また「5. Computer」の「-er」は英語では長音ではないという認識が広まったことで、日本語でも長音として発音しない人が増えたなどという例もあります。

西洋諸言語からの外来語はひらがなではなくカタカナという表記法で書かれます。ひらがなもカタカナも各文字は特定の中国語の文字を元に作られており、同じ音を表すひらがなとカタカナが、同じ中国語の文字からできていることもあるので、カタカナの中には、全体的に、または一部が対応するひらがなに似ているものがあります。次のページの表では、このような文字の類似がある場合には、カタカナの下にひらがなも記しています。カタカナを覚える際の手がかりにしてください。

基本音節(カタカナ)

(50音表)

濁音の規則はひらがなと同じです。

濁音(カタカナ)

(表)

拗音の規則もひらがなと同じです。

拗音(カタカナ)

(表)

31ページと32ページの表で見たように、ひらがなとカタカナの表記法はほとんど同じで、違いは各文字の違いだけです。しかし、以下の2点に関しては、文字の相違以上の違いが見られます。

1. 長音は「ー」で記される。

29ページの例で見たように 「hamburger」「computer」の下線部分の音は日本語では長音だと見なされますが、ひらがなでの規則と違い、カタカナでは長音は「-」という横棒を使って表記されます(例:「ハンバーガー、コンピューター/コンピュータ」)。日本語では文が縦に書かれることもありますが、その場合は代わりに縦棒「|」が使われます。

2. ひらがなにはない濁音や拗音が存在する。

西洋諸言語からの外来語の使用に伴って、一般的には日本語では使われない音が使われるようになったために(29ページ参照)、これらの音を表記するカタカナも必要になりました。このために、カタカナには、ひらがなにはない濁音や拗音が存在します。例えば、「スパゲッティー/スパゲティ」の「ティ」に見られる小さい「ィ」はひらがなでは使われません。他にも、下の表に見られるように、小さい「ァ」「ェ」「ォ」を使う単語もあります。

(単語の例1-3)

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[確認問題] SW2

A. カタカナは漢字以外で書かれる外国の名前や地名を表記する際にも使われます。下のカタカナが表す国や地域を下の a~p から選びなさい。

(問題1-16)

B. 下は日本語で使われる英語の単語です。今まで勉強したことを使って、表内の発音をカタカナで正しく書きなさい。

(問題1-20)

[ここで、練習編の練習4-3をしてみましょう。]

音と表記3. 漢字 [pp.35-38]

ひらがなとカタカナは日本語のために日本で作られた表記法ですが、ひらがなもカタカナもなかった時代には、日本語は中国の文字を使って表記されました。この文字は「漢字」と呼ばれ、今日でもひらがなとカタカナと共に使い続けられています。これら3種類の表記法がどのように使われるかを確認するために、イギリスから来たJonesという名前の先生に、26ページで学習した表現を使って別れの挨拶をするという場面を想定し、その表現をどのように表記するか考えてみましょう。

Jones は外国の名前なのでカタカナで「ジョーンズ」と書かれます。一方「 teacher; professor」と「excuse me; goodbye (to a teacher)」は外来語ではないので、ひらがなを使って「せんせい」「しつれいします」と書くことができます。

(例文1)

しかし、実際には、ほとんどの場合、この文は次のように書かれます。

(例文2)

「先生」と「失礼」がここでは漢字で書かれています。(どちらの表記法で書かれても発音が変わることはありません。)日本語のほとんどの文は、このように主な3種類の表記法を使い分けて書かれます*。

ひらがな、カタカナが作られる前の日本語は全て漢字で書かれていたので、現在でもほとんどの日本語の語は漢字を使って書かれますが、現代日本語では、前のセクションで学習した西洋緒言語からの外来語はカタカナで表記され、文法機能を表す語や言語要素(助詞や動詞・形容詞の活用語尾など)はひらがなで表記されます。

[*35ページ脚注]

数字は漢字や仮名で書かれることもアラビア数字で書かれることもあります。また、少数ですが、「CD」や「Tシャツ」のように、ローマ字を使って書かれる単語もあります。

漢字には次のような特徴があります。

1. 各漢字が特定の意味を表す。

ひらがなとカタカナは音しか表しませんが、漢字は、各文字が音に加えて意味を表します。

2. 1つの漢字が複数の発音を持つ。

ひらがなとカタカナは各文字がある特定の1つの発音を表しますが、漢字はたいてい2つ以上の発音を表します。

前の例で見た「先生」という単語を使って、上の特徴2点を確認しましょう。

(「先生」の例)

この単語には2つの漢字が使われていますが、上の表に見られるように、それぞれの漢字が個別の意味を持っています。単語に2つ以上の漢字が使われる場合、その単語の意味はこれら個別の漢字の意味の組み合せで、通常は抽象的なレベルでの意味の組み合わせになります。例えば、「先生」という漢字では、「まれて、後に生まれた人に教えられる人」というような概念が表されています。

音に関しては、上の各漢字が2つ以上の読み方を持っていることが分かります。どの読み方を使うかは、その漢字がどの単語に使われているかによって決まります。例えば「to be born」という単語は日本語では「生まれる」で、「birth」を意味する上の漢字②が使われます。しかし「先生」と違って、読み方は「せい」ではなく「う」です。
 

[p.36] Quick Note: 振り仮名

多くの漢字は複数の読み方を持つので、ここまで読んだ学習者の皆さんは、かなり詳しい漢字の知識がない限り、普通に書かれた日本語は読めないのではないかと心配になっているかもしれません。それが実際に問題になる場合はありますが、日本語の表記には漢字学習者のためにその読み方を示す方法があります。これは振り仮名と呼ばれ、漢字の上か下にひらがなで書かれ、その漢字の読み方を表します。

(例文)

振り仮名は対象読者が持っていると考えられる漢字の知識量に基づいてどの程度振られるかが決まりますので、この教科書の中の漢字を読む際にも心配することはありません。

漢字の文字は、実際の物の形やある特定の音や抽象的な概念などを表す様々な要素からできています。そのため、文字の構造の中に意味や読み方の手がかりが隠されていることが多くあります。

例えば日本語の数字「いち」「に」「さん」は、漢字ではそれぞれ「一」「二」「三」と書かれます。また、日本語では「くち」という発音の「mouth」の漢字は「口」で、実際の口に似た形をしています。そして、この漢字は、話すことに関する次のような漢字で、文字の一部として使われています。

(漢字語彙の例)

さらに、最後の漢字「語」の右上には「五」という要素があります。これは「ご」と発音される日本語の数字「five」の漢字です。「五」が「語」の漢字の発音を表すために、その漢字の要素として使われています。

 
[pp.37-38] Quick Note: 漢字の学習法

ほとんどの漢字は複数の読み方や意味を持つため、各漢字についてその全ての情報を覚えようとするのは効率的な学習法ではありません。漢字の学習は次のような手順で行いましょう。

1. 語彙を覚える

この教科書では新しい漢字は例文で使われる語彙を通して導入し、スムーズに効率よく学習できる順序で導入しています。漢字を勉強する、まずは語彙の発音と意味、そしてそれが使われている例文をしっかり学習し、語彙を覚えるようにしましょう。

2. 語彙と漢字との意味的な関連を確認する

次に勉強した語彙の意味と漢字の意味の間の関連を確認しましょう。

3. 各漢字の要素を見る

その後で、各漢字を見て意味や音の手がかりとなる要素を確認してください。既習の漢字で使われている要素には特に注意し、できるだけ既存の知識と関連付けるようにしましょう。この教科書で導入される各漢字の要素についての様々な情報が、本書のウェブサイトの漢字編で提供されています。

4. 学習アプリで繰り返し練習し漢字と語彙の知識を定着させる

本書のウェブサイトで提供している学習アプリを使って、学習した漢字を最適な間隔を保ちながら繰り返し練習し、漢字の知識を定着させてください。

 

日本語ではいくつの漢字が使われるか。

日本語では、使用される多くの漢字の中の2136字が、一般的に使われる「常用漢字」(法令,公用文書,新聞,雑誌,放送など,一般の社会生活において,現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安)として、内閣告示で定められています。大変多くの文字を覚えなくてはいけないと感じるかもしれませんが、実際には、常用漢字の中でも高頻度で使われるものとそうでないものがあるので、よく使われる漢字から覚えていくことが大切です。この教科書では最も頻繁に使われる最も基本的な350の漢字を勉強します。

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[確認問題] SW3

A. 下は日本語の1から10の数字を書く時に使われる漢字です。各漢字の上に正しい振り仮名を書きなさい。

(問題1-10)

B. 下では前のセクションで勉強した単語が漢字で書かれています。各漢字の上に正しい振り仮名を書きなさい。

(問題1-8)

C. 下では前のセクションで勉強した家族用語が漢字で書かれています。各漢字の上に正しい振り仮名を書きなさい。[単語a: 一般的な用語 単語b: 自分の家族を指す用語]

(問題1-6)

モジュールII 文法編 [pp.39-240]

文法ポイント1. 助詞と動詞文 [pp.41-56]

[1] 日本語の文を作る基本規則

ここでは、文法的に正しい文を作るための最も基本的な2つの文法規則について勉強します。

規則1:文中の名詞は助詞によって役割が決められる。

日本語では「助詞」という機能語が文中の名詞の役割を決定します。これは機能的には英語の「in, at, to, on」などの前置詞に似ています。しかし、英語ではこれらの語が名詞の前に置かれるのに対して、日本語では名詞の後に置かれるという違いがあります。

規則2:動詞は文末に置かれる。

日本語では、動詞は主語と目的語の後に置かれます。日本語文の典型的な語順は「主題/主語ー目的語ー動詞」です。英語の「主語ー動詞ー目的語」という語順とは違うので、注意が必要です。

この2つの規則に注意しながら、次の例文を読んでみましょう。

(例文1-4)

[2] 助詞の機能

動詞「たべる: to eat」「いく: to go」が文末に置かれていることから、規則2(動詞は文末に置かれる)は明らかでしょう。では、規則1の助詞はどうでしょうか。これらの例文では「は」「を」「で」「に」という4つの助詞が使われていて、それぞれ前節する名詞の文中での役割を決定しています。まず、例文2, 3, 4にある助詞「で」と「に」を見てみましょう。これらの助詞は、英語の前置詞と比較することで機能が理解しやすくなります。

助詞「で」は前接する名詞が動作が行われたり出来事が起こったりする場所であることを示します。上の例文2では、「レストラン」は「私」が「魚を食べる」という動作をする場所であるため、助詞「で」が後続しています(→「レストランで」)。これは英語の前置詞「at」や「in」(「at (the restaurant)」「in (the restaurant」など)に似た機能を果たしています。ただし、日本語では助詞が名詞に後続していることに注意してください。

助詞「に」は前接する名詞が動作が行われたり出来事が起こったりする時間であることを示します。上の例文3では、「1時」が「魚を食べる」という動作が起こる時間であるため、助詞「に」が後続しています(→「1時に」)。これは英語の前置詞「at」や「in」(「at (1 o’clock)」「in (January)」など)に似た機能を果たしています。

動作が行われたり出来事が起こったりする時間に加えて、助詞「に」は前接する名詞が移動の目的地や動作が向けられる対象であることも示します。例文4では「学校」が「行く」という移動行為の目的地であるために助詞「に」が後続しています(→「学校に」)。これは英語の前置詞「to」(「(go) to (school)」「(give it) to (my friend)」など)に似た機能を果たしています。

次に、上の例文で使われている残りの2つの助詞「は」と「を」を見てみましょう。先に勉強した「で」と「に」と違って、「は」と「を」にはそれに類似した英語の前置詞がないので、注意が必要です。

は [wa]

助詞「は」は前接する名詞がその文の主題であることを示します。大ざっぱに言えば、主題というのは文の中心的な話題のことで、多くの場合、主題は文の主語と一致します*。例えば、「私は日本人です」「私は20歳です」「私は魚が好きです」などの文の主題は文の主語でもある「私」です。英語では「は」に当たる前置詞はありませんが、「as for ~」や「talking about ~」のような表現は似た意味を表すと言えます。例文1は、より文字通りに訳すと「As for me, (I) eat fish.」のようになります。

主題に後接する助詞の発音は /wa/ ですが、ひらがなでこの助詞を書く時は「わ [wa]」の代わりに「は [ha]」を使います。注意してください。

[*43ページ脚注]

ただし、主題は常に文の主語だというわけではありません。この違いについては後ほど71ページページや89ページ、そして116ページでさらに詳しく学習します。

を [o]

助詞「を」は前接する名詞がその文の直接目的語であることを示します。直接目的語というのは、行動によって直接的に影響を受ける対象のことです。例えば、「I eat fish.」や「My friend eats lunch.」のような文での直接目的語は、それぞれ「fish」「lunch」です。英語では直接目的語はたいてい動詞の直後に置かれます。

直接目的語に後接する助詞の発音は /o/ ですが、ひらがなでこの助詞を書く時は「お [o]」の代わりに「を [(w)o]」を使います。注意してください。

[3] 日本語と英語の重要な違い

ここで、主語/主題と直接目的語について日本語と英語の重要な違いを見てみましょう。英語では文中の主語と直接目的語を決めるのは語の位置です。例えば「Cats eat fish.」と「Fish eats cats.」は全く異なった状況を表します。これは、英語では動詞の前の名詞が主語、動詞の後の名詞が直接目的語になるからです。しかし、日本語では動詞は常に文末に置かれるため、このような規則はなく、主題も直接目的語も助詞によって決定されます。日本語では、文中の位置にかかわらず「は」に後続される名詞が主題、「を」に後続される名詞が直接目的語になります。言い換えると、主題はたいてい例文(1)-aや(2)-aのように直接目的語の前に置かれますが、正しい助詞が正しい名詞に使われている限り、例文(1)-bや(2)-bのように直接目的語の後に置くことも文法的に可能になります。

(例文1-2)

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[確認問題] GP1-1

A. 各文は (a) I eat fish か (b) Fish eat me のどちらかを意味します。括弧に a か b を入れなさい。

(問題1-4)

B. 次の文を読みなさい。文法的に正しい文には〇、正しくない文にはXを入れてください。

(問題1-10)

C. 各文は間違った、または英訳に合わない助詞を1つ以上含んでいます。その助詞を正しく直しなさい。

(問題1-5)

[ここで、練習編の練習5-1をしてみましょう。]

 

前のセクションでは、助詞「は」「を」「で」「に」を勉強しました。このセクションでは「で」と「に」の他の用法と新しい助詞を勉強します。

行動が行われたり出来事が起こったりする場所であることを示すのに加えて、助詞「で」は前接する名詞が行動を行うための方法や手段であることを示します。

(例文1-4)

[*45ページ脚注1]

「~さん」は人名の後に使われ、相手への敬意を表します。この意味で英語の「Mr.」や「Ms.」に似ていますが、これらの英語の表現に比べて、「~さん」はより頻繁に使われ、名字だけでなく下の名前にも使われるという違いがあります。

時間と目的地や行動の対象に加えて、助詞「に」は前接している名詞が誰かまたは何かが存在している/位置している場所であるということを示します。

(例文5-6)

これらの例文では「デパート」「ここ」はそれぞれ「私」「本」が存在/位置する場所です。それを示すために、助詞「に」がこれらの名詞に後接しています。

助詞「に」は、行動が行われたり出来事が起こったりする場所を示す助詞「で」と似ているために、注意が必要です。下の例で「学校」「ここ」に助詞「に」を使うのは非文法的です。これは、これらの例文ではこれらの場所は「勉強する」「本を読む」という行動が行われる場所であるためです。

(例文7-8)

言い換えると、文における場所の役割によって、同じ場所でも異なった助詞を使わなければいけないということになります。

(例文9-10)

[**45ページ脚注2]

日本語には、存在や位置を表す動詞として、「いる」と「ある」という二つの動詞が存在します。この二つは、次のように使い分けてください。

いる:生きていて運動性があるもの(人間・動物)の存在や位置を表す時に使う。

ある:命がないものと生きていても運動性がないもの(植物)の存在や位置を表す時に使う。

上の例文(5)と(6)では、「私」の存在を表す場合は「いる」が、「本」の存在を表す場合は「ある」が使われています。また、「いる」と「ある」の選択には、生きているかどうかに加えて運動性があるかどうかということも考慮されることに注意してください。植物は命はありますが運動性がないため、位置や存在を表す時に「ある」が使われます。

(例文)

へ [e]

助詞「へ」はする前接する名詞が移動の目的地であることを示します。目的地に後接する助詞の発音は /e/ ですが、ひらがなでこの助詞を書く時は「え [e]」の代わりに「へ」を使います。注意してください。

(例文11)

この用法の「へ」は前のセクションで勉強した「に」と置き換えが可能です。

(例文12)

助詞「と」は前接する名詞が行動の主行為者がそれを一緒にする相手であるということを示します。これは英語の前置詞「with」(「(go) with (my friend)」など)に似た機能を果たしています。

(例文13-14)

助詞「も」は前接する名詞が前出した人や物と共通した性質を持っていたり同じ行動をしたりするということを示します。これは英語の「too, also, either」などの語に似た機能を持っています。

(例文15-16)

1つ目の例文では、「コンピュータ科学」が助詞「も」にマークされています。これは「コンピュータ科学」が前出の「日本語」と「私が勉強する」ものだという特質を共有しているからです。2つ目の例文では、BはAと同じ行動(8時に学校に行く)をするために、Bは「私」を助詞「も」でマークしています。

(例文17-20)

例文17では「図書館」が「レストラン」と「私」が行く場所であるという特質を共有しています。例文18では、「うち」は「学校」と同じように「兄が勉強する」場所です。例文19では「イーさん」は「田中さん」と同じように「私が一緒に勉強する」人です。例文20では、「水曜日」は「私が大学に行く」曜日という意味で「月曜日」とその特質を共有しています。

ここで、例文15と16では助詞「も」が元の助詞(それぞれ「を」と「は」)を置き換えているのに対して、例文17-20では、助詞「も」が元の助詞(それぞれ「に」「で」「と」「に」)の後に追加されているということにも注意してください。原則的に、助詞「も」は主題を示す助詞「は」、直接目的語を示す助詞「を」、主語を示す助詞「が」(後ほど82ページで学習します)の3つの助詞は置き換えますが、他の助詞の場合は置き換えるのではなく元の助詞の後に追加されることになります。

から 

助詞「から」は前接する名詞が行動の時間的、または空間的な起点であることを示します。これは英語の前置詞「from」に似た機能を果たしています。時間的な起点を表す場合、「から」は「since」や「(starting) at」とも訳されます。

(例文21-22)

まで 

助詞「まで」は前接する名詞が行動の時間的または空間的な終点であることを示します。これは英語の前置詞「until」や「up to」に似た機能を果たしています。

(例文23-25)

より 

「Aより~」の形で使われる助詞「より」は、英語の「(more ~) than A」や「(~er) than A」と同じ意味で、比較する時に使われます。次の例文を見てください。「私より」を追加することによって、2つ目の文は「学生」と「私」が魚を食べる頻度を比較してます。

(例文26-27)

[*49ページ脚注]

上の例文では「よく: often」がどの助詞にもマークされていないことに気がついたかもしれません。これは、名詞と違って、副詞には一般的に助詞が必要ないからです。続くセクションでは「たいてい: usually」や「ときどき: sometimes」のような副詞も助詞が後接せずに使われます。

助詞「より」を使う時にも語順の違いに注意してください。他の助詞と同じように、「より」も常に前接する名詞をマークするため、下の例文28のように語順を替えて「私より」を文頭に前に出しても、意味は例文27と同じになります。

(例文28-30)

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[確認問題] GP1-2

A. 正しい助詞を選びなさい。

  1. 直接目的語をマークする助詞
  2. 行動や出来事が起こる場所を示す助詞
  3. 誰か/何かが存在する場所を示す助詞
  4. 行動や出来事が起こる時間を示す助詞
  5. 起点を示す助詞
  6. 話題を示す助詞
  7. 時間的、量的、空間的な限界点を示す助詞
  8. 行動の手段や道具を示す助詞
  9. 移動の目的地や方向を示す助詞
  10. 「(more) than …」や「(~er) than …」を意味する助詞
  11. 「with (someone)」を意味する助詞
  12. 共通した特質や同一の行為者を表す名詞を示す助詞

B. 次の文を読みなさい。文法的に正しい文には〇、正しくない文にはXを入れてください。

(問題1-13)

[ここで、練習編の練習5-2をしてみましょう。]

このセクションでは、今までに習った助詞と少し違った使い方をする4つの助詞を勉強します。これらの助詞は2つの名詞の間で使われて、それらの相互関係を表します。

助詞「と」は「[名詞1]と[名詞2]」という形で名詞を網羅的に並べて示す時に使われます。英語の「and」に当たります。下の例文2の「肉と魚」の意味は「meat and fish」です。このために、直接目的語を示す助詞「を」は「魚」だけに後接し「肉」には後接していませんが、「を」がマークする範囲は両方の名詞ということになり、「肉と魚」が直接目的語だということを示すことになります。

(例文1-2)

「と」の使われ方に注意して、下の例文とウェブサイトの追加の例文を読んでみてください。例文6から分かるように、この助詞が並列する名詞は2つだけとは限りません。それぞれの名詞の間に「と」を使うことによって、「と」は3つ以上の名詞を並べて示すこともできます。

(例文3-6)

なお、「と」は英語の「and」に当たりますが、この助詞はある名詞を他の名詞をつなげる時にしか使われず、他の語や句とは使われないので注意してください。例えば、形容詞を並列する時(smart and kind)」や文を並列する時(I read a book and he does homework)には「と」は使われません。(このような場合については、109ページを見てください。)

助詞「や」は上の助詞「と」と似た意味を持ち、英語では「and」と訳されます。違いは「や」は名詞を網羅的でない形で並列するという点です。下の2文を比べてみてください。

(例文7-8)

1つ目の例文は「と」を使い名詞を網羅的に並べているため、「うち」と「学校」が「私が勉強する」唯一の場所であるというニュアンスになります。一方、2つ目の例文では名詞を網羅的でない形で並べる「や」が使われているため、「うち」と「学校」はあくまで「私が勉強する」場所例文例であり、他にも「私」が勉強する場所があるということをほのめかしています。ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

助詞「か」は「[名詞1]か[名詞2]: Noun1 or Noun2」という形で、複数の名詞のうちどれか1つのみ選ばれるという意味を表す時に使われます。英語では「or」に当たります。下の例文9の「肉と魚」は「meat or fish」という意味です。ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

(例文9-10)

助詞「の」も2つの名詞の間で使われ、助詞に前接する名詞が後接する名詞を修飾・描写・説明するということを意味します。まず、下の名詞句を見てみましょう。

(例文11-15)

これらの例に見られるように、助詞に前接する名詞は後接する名詞を様々な意味で修飾・描写・説明し、2つの名詞の間の関係や全体的な意味は文脈によって決定されます。助詞「の」と前後の名詞の関係に注意して、下の追加の例文を読んでみましょう。

(例文16-19)

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[確認問題] GP1-3

A. 括弧の中の全ての語と助詞「と、や、か、の」を正しく使って、次の文を完成しなさい。

(問題1-9)

B. 各文は間違った、または英訳に合わない助詞を1つ以上含んでいます。その助詞を正しく直しなさい。

(問題1-6)

[ここで、練習編の練習5-3をしてみましょう。]

日本語で this は「これ」、book は「本」ですので、this book という句は上で勉強した助詞「の」の規則を使って「これの本」となると考えるのが自然です。しかし、日本語の「これ」と英語の this との間にはこの使用に関して違いがあるので、残念ながらこのようには言えません。

英語の this は指示代名詞としても指示形容詞としても使えます。(指示代名詞としての例「I read this.」、 指示形容詞としての例 I read this book.)。しかし、日本語の「これ」は指示代名詞としてしか使えず、厳密には「これ」は this [thing] や this [one] という意味を表します。指示形容詞としての this は、日本語では「これ」ではなく「この」という別の関連語が使われます。「この」は常に名詞が後接しなくてはいけないという規則があります。下の例文2で指示形容詞 this が「これの」ではなく「この」となっていることに注意してください。

(例文1-2)

「これ→この」の変化は類似表現の「それ: that (thing/one close to you)」と「あれ: that (thing/one far from both of us)」にも当てはまります。下の例文4と6では、それぞれ「それの」「あれの」ではなく、関連する指示形容詞「その」「あの」が使われています。

(例文3-6)

疑問詞「どれ: which (thing/one)」も同様に使われます。Which book は「どれの本」ではなく「どの本」になります。

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各空欄に「の」か「これ」か「この」を入れて、文法的に正しい文を完成しなさい。 

文法ポイント2. 動詞の活用 [pp.57-64]

この課では、丁寧さやフォーマル度のレベル、時制、肯定と否定などをコントロールする方法について学習します。これによって、前に勉強した文をフォーマルな場面で使える形に変更できるようになります。

[1] 丁寧さとフォーマル度のレベルのコントロール

日本語では、文の丁寧さとフォーマル度のレベルは主に文末の動詞の形を変えることでコントロールされます。下の文の文末に注目してください。

(例文1-2)

どちらの文も意味は「I go to the library.」ですが、丁寧形で終わっている例文2は、普通形で終わっている例文1より丁寧な話し方の文だと言えます。実用的に言うと、例えば1つ目の文は友達と話している時に、2つ目の文は先生と話している時に使うのに適した文です。

日本語の辞書では、動詞はたいてい非過去肯定の普通形でリストされます。(このために、この形は通常「辞書形」と呼ばれます。)つまり、フォーマルでない場面で友達と話す場合など、くだけた話し方で話す時は、上の例文1のように、動詞の辞書形をそのままの形で使うことができます。しかし、知らない人やあまり親しくない人、先生や上司などとの会話のように、よりフォーマルな場面では、辞書形を使った文はくだけすぎた話し方だと取られてしまいます。このような場面では、上の例文2のように、文末の動詞の形を丁寧形に変えて丁寧さのレベルを増すことが大切です*。(脚注は次のページにあります。)

[*58ページ脚注]

書き言葉でのフォーマル度は話し言葉での丁寧さとは異なる形で表されます。くだけた言葉遣いで書かれたもの(友人や家族へのメールやテキストや他の形式でのメッセージなど)に加えて、フォーマルなものにも、新聞記事や研究論文のように通常普通形を使って書かれるものがあります。他の場合は、普通形と丁寧形のどちらも使われることがあります。

[2] 動詞の丁寧形への活用

動詞を丁寧形にするには、以下の2つの手順を踏んでください。

ステップ1:動詞のグループを調べる。

ステップ2:そのグループの規則に従って形を変える。

ステップ1:動詞のグループを調べる。

日本語の動詞は「ル動詞」「ウ動詞」「不規則変化動詞」の三つのグループに分けられます。 動詞がどのグループに入るかは、動詞の辞書形の語末の形に注目してください。最終的には、動詞の辞書形の最後の音が -iru か -eru で終わるか終わらないかがポイントになります。

グループの調べ方

  1. 不規則変化動詞は「する」と「来る」の2つしかありません。
  2. 「る」で終わらない動詞は、全て「ウ動詞」です。(例:歌う、読む)
  3. 「る」で終わる規則動詞には「ウ動詞」も「ル動詞」もあります。ほとんどの場合は、語末が -iru か -eru で終わるかどうかでグループを判断することができます。
  • -iru か -eru で終わらない動詞は、全て「ウ動詞」です。(例:ある、座る、売る、乗る)
  • -iru か -eru で終わる動詞は、ほとんどの場合「ル動詞」です。(例:いる、寝る、)
  • ただし、この規則には例外があり、-iru か -eru で終わる動詞の中にも「ウ動詞」に入るものがあります。例えば「帰る」は -eru の音で終わりますがウ動詞です。-iru か -eru の音で終わるウ動詞を勉強した時は注意してください。

(動詞の例)

ステップ2:各グループの規則に従って形を変える。

それぞれのグループの動詞を丁寧形に変えるためには、下の規則に従ってください。下の例から分かるように、動詞の丁寧形は「-ます」で終わるので、マス形とも呼ばれます。

辞書形の動詞を非過去肯定の丁寧形に変える規則

ル動詞 語末の ru を masu に変える。(動詞の例)

ウ動詞 語末の u を imasu に変える。(動詞の例)

不規則動詞 これらの動詞は不規則に活用します。個別に覚えてください。「する→します」「来る→来ます」

[*表外の注意書き:子音の変化については18ページを見てください。]

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[確認問題] GP2-1

A. 下の動詞を非過去肯定の丁寧形に変えなさい。

(問題1-7)

B. 下の動詞を非過去肯定の丁寧形に変えなさい。

(問題1-17)

C. 先生と話す時、下の文をどのように言いますか。

(問題1-5)

[ここで、練習編の練習6-1をしてみましょう。]

日本語を勉強し始めたばかりの学習者には、まず丁寧な話し方を練習することをお勧めします。これには、主に下の二つの理由があります。

  1. 丁寧な話し方は失礼になることなく、様々な場面で使えます。日本語では、あまり知らない人や先生や上司にくだけた話し方をするのは失礼だと考えられます。丁寧な話し方をすることで、無意識に失礼になってしまうというリスクを減らすことができます。
  2. 丁寧形の活用は普通形の活用よりやさしいです。

このような理由で、まずは、丁寧な話し方で、肯定文や否定文、そして過去形の文を作る方法を勉強していきましょう。くだけた話し方については100ページを見てください。

[1] 活用規則

GP2-1で学習したように、動詞の丁寧形の非過去肯定形はいつも「-ます」で終わります。この「-ます」の部分を下の規則に従って活用することで、非過去と過去の間で時制を変えたり、肯定文と否定文を作ったりすることができます。

丁寧形の動詞の活用規則

(活用規則の表)

[2] 動詞の「非過去形」が表す意味

上の表の中には「非過去形」と「過去形」という二つの時制があります。「過去形」は、名前が表す通り、過去の行動や活動や出来事を表すのに使われる形です。一方「非過去形」は文脈によって以下の2つの違った意味を表します。

  1. 習慣的な行動や活動や出来事
  2. 未来の行動や活動や出来事

この2つの意味の違いをよりよく理解する見るために、次の文の意味を考えてみましょう。

(例文1-2)

1つ目の文は「私」が毎日行う習慣的な活動を、2つ目の文は「私」が明日行う、未来の活動を表しています。日本語では、このどちらの場合にも、同一の「非過去」の時制が使われます。ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

[3] 時間の表現と助詞「に」

[1] で説明した形を使って、過去と非過去の様々な時点についての文を作ることができるようになりました。しかし、これらの文の時間枠を特定する時に、使用する時間表現に助詞「に」を使うかどうかについて注意が必要です。42ページで勉強したように、時間表現の名詞は原則的には助詞「に」でマークされます。しかし、上の例文1と2では、文中の「毎日」と「明日」に助詞「に」が後接していません。日本語の時間表現の中には助詞「に」が使われないものが他にもあります。以下は「に」の使用・未使用の原則的な規則です。

「に」を使う

原則的に、絶対的な時間表現、つまり、いつ使われても指示する時間が変わらない、カレンダーや時計で示されるような表現には「に」を使います。以下のような表現が含まれます。

暦で定められる期間(表現の例)

休日(表現の例)

特定の時間(表現の例)

曜日(表現の例)

「に」を使わない

原則的に、相対的な時間表現、つまり、使われる時によって指示する時間が変わる、カレンダーや時計で示されないような表現には「に」を使いません。以下のような表現が含まれます。

現在を起点にした相対的な時間関係を表す表現(表現の例)

頻度を表す表現(表現の例)

「に」を使っても使わなくてもよい

「に」を使っても使わなくてもいい表現もあります。以下のような表現が含まれます。

1日や1週間、1年の一部で、起点・終点がはっきりと定められていない表現(表現の例)

時間の幅が広い表現(表現の例)

現在以外を起点とした相対的な時間関係を表す表現(表現の例)

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[確認問題] GP2-2

各文は間違った、または英訳に合わない助詞を1つ以上含んでいます。その助詞を正しく直しなさい。

[話者はフォーマルな状況で丁寧に話している。]

(問題1-10)

[ここで、練習編の練習6-2をしてみましょう。]

文法ポイント3. 基本会話 [pp.65-72]

[1] 二者択一の質問

この課では、前のセクションで勉強した文を使って基本的な会話を練習します。まずは質問文の作り方を勉強します。

日本語では、(もう予測できたかもしれませんが)疑問文を作る時にも助詞を使います。使われる助詞は「か」です。「か」は文全体を疑問文に変えるので、文末に置かれます。

(例文1)

このように、日本語では助詞「か」を文末につけるだけで、文を疑問文に変えることができます。これは、否定文や過去文でも同じです。英語のように語順を変えたり助動詞を加えたりする必要がないことに注意してください。

(例文2-4)

[2] 疑問詞を使った質問

日本語では、「何、誰、どこ、いつ」のような疑問詞を使った質問文の作り方も大変単純で、分からない情報を適切な疑問詞に置き換えるだけでこのような疑問文を作ることが出来ます。

(例文1)

例えば、例文1-cでは、「テニス」を「何」に単純に置き換えるだけで、イーさんが何をしたかを質問することができます。前述したとおり、英語のように疑問詞を文頭に移したり語順を変えたりする必要はありません。

どの部分がどの疑問詞で置き換えられているかに注意しながら、例文を見てみましょう。ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

(例文2-6)

[*67ページ脚注1]

疑問詞「何」は「なに」と「なん」という2つの発音があります。どちらの発音になるかは、後続する要素によって決まります。基本的な規則は以下の通りです。

  1. 基本的には「なに」と発音される。(例:何を、何も、何人、何語、何料理)
  2. 助詞「の」の前、引用の助詞「と」(GP5-3参照)の前、「~だ/です」(GP4参照)の前では「なん」と発音される。
  3. 何かの量や順を問うことになる助数詞や接尾語、つまり「how many」や「what number」の意味になる場合は「なん」と発音される。(例:何人、何時、何歳、何曜日)

[**67ページ脚注2]

62ページで勉強したように、日本語の時間表現には助詞「に」を使うものと「に」を使わないものがありますが、疑問詞「いつ」は後者に当たります。下の例を見てください。

(例文a-c)

2の文では、「何時」という疑問詞を使った表現を作るために、「何」は「1」の部分だけを置き換えています。「~に」は特定の時間表現に必要な助詞で、「何時」は特定の時間を問うているので、この場合は「に」が残っています。一方、3の文では疑問詞「いつ」の後に助詞「に」が使われていません。「何時」と違い、「いつ」は特定の時間の単位について聞いているわけではない、「いつ」が「1時に」の全ての部分を置き換えると考えてください。

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[確認問題] GP3-1

下のそれぞれのQの文を「何」か「誰」か「どこ」を使った疑問文に変えなさい。

(問題1-6)

[1] 「あなた」の不使用

英語の「you」に当たる日本語の単語は「あなた」です。しかし、ほとんどの場合、下のような質問でこの語が使われることはありません。

(例文1)

この理由は、日本語では、話している相手を「あなた」と呼ぶのは失礼だと考えられるからです。当然ながら、目上の人が目下の人を呼ぶ時や講演者が不特定に観衆に対して問いかける時など、許容される場合もありますが、友達や先生に直接 you と言う時にはまず使いません。話し相手に呼びかけたり、相手のことを言及する場合は、たいていは相手の名前を使います。

(例文2 田中さんに話している)

では、話し相手の名前が分からない時や名前を忘れてしまった場合は、どうすればいいでしょうか。この場合は、主題に当たる you とその助詞「は」を完全になくして質問をすればいいです。

(例文3 会ったばかりで名前を忘れてしまった留学生に話している)

「~は」で表される主題がありませんが、3のような文は完全に文法的な文だと考えられます。実は、このような主題を省略した文は、日本語では当たり前のように使われます。次のセクションで主題の省略についてより詳しく勉強します。

[2] 主題や他の要素の省略

次の文を見てみましょう。

(例文1)

この2文はどちらも文法的に正しいですが、このようにつながれた2文は日本語では自然には聞こえません。理由は2文目で「私は」が繰り返されているからです。上の文は、日本語では以下のように言い換えるとより自然になります。

(例文2)

1文目で「私」が主題であることが明示された後は、それが2文目でも暗に引き継がれるため、主題を繰り返す必要がありません。日本語には、このように、文脈や状況から明らかな場合は、主題が文から省略されるという特徴があります。次の例として、前のセクションで勉強した質問文をもう一度見てみましょう。

(例文3 会ったばかりで名前を忘れてしまった留学生に話している)

この質問に主題に当たる you が含まれていなくても問題がない理由は、状況からこの質問が誰に向けられているかが明らかだからです。また、このように省略されるのは主題だけではありません。文の他の要素も、文脈から明らかな場合は省略が可能で、実際に多くの場合省略されます。

(例文4)

上の文では、“my teacher” の “my” に当たる「私の」が含まれていませんが、英訳のように解釈されます。逆に、「私は私の先生のオフィスに行きました」と文脈から明らかな「私の」を含んでしまうと、不自然な文になってしまいます。

右の会話で、どの部分が省略されているかによく注意して、下の会話を比べてみましょう。(文脈から明らかな場合は、右の会話の(  )内の「イーさんは/田中さんの/田中さんは」の部分も省略可能です。)

(会話5-9 全ての文で主題が明示されている会話 より自然な会話)

[3] 基本語順

助詞の機能や疑問文の作り方を考えると分かるように、日本語において、語順は文の中の語の役割や文の種類の決定において決定要因ではありません。このために、日本語では文の意味を大きく変えることなく比較的自由に語順を変化することができます。とは言っても、より自然な語順と不自然な語順は存在します。43ページで見た「昼ご飯を父は食べる」のような文はほとんどの文脈で不自然に聞こえてしまいます。練習する時は、文がより自然に聞こえるように、次のような基本語順を意識するといいでしょう。

(例文1-4 1.主題 2.時間/頻度 3.行動を共にする人 4.場所/目的地 5.目的語 6.動詞)

今までの例文では、主に助詞「は」が文の主語を主題としてマークしている文を勉強しました。しかし、主題は常に文の主語だというわけではありません。文の中心的な話題であれば、「は」は文の主語だけでなく、目的語や他の要素など、どんな名詞でもマークすることができます。次の会話を見てみましょう。

(会話の例)

この文脈では、Bの最後の発話で主題になっているのは「魚」ですが、この名詞は、文法的には文の主語ではなく目的語です。にもかかわらず、日本語の文では、この目的語が「は」でマークされています。このような「は」の多様な用途については116ページでさらに詳しく学習します。

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[確認問題] GP3-2

下の文の間違いや不自然な部分を直しなさい。

(問題1-4)

[ここで、練習編の練習7から10をしてみましょう。]

文法ポイント4. 名詞文・形容詞文 [pp.73-93]

[1] 日本語での「To Be」

次の例文を見てください。

(例文1-3)

全ての文に英語の「be動詞(am, is, are)」が使われていますが、これらのbe動詞は、それぞれ文中で以下のような3つの異なった意味を表しています。

  1. 位置や場所 (X is in Y) (英語の例)
  2. 存在 (there is a/the X) (英語の例)
  3. X=Yの関係 (X=Y) (英語の例)

45ページで勉強したように、1と2のような位置/場所や存在を表す場合は、英語のbe動詞は、日本語で動詞「いる/ある」で表されることになります。一方、「X=Y」の関係を表す3の場合は1や2と異なります。名詞Yが述部(つまり文末でXの解説)になっている文では、日本語では「だ」という特別な表現が使われます。ここで「だ」の使用についてより詳しく見てみましょう。

[*73ページ脚注]

助詞「が」は文の主語をマークします。その機能と用途の詳細は82ページと89ページで勉強します。

[2] 「だ」を使った文

[1] の例文1と2で見た「to be」に当たる日本語の動詞「いる、ある」と同様に、X=Yの関係を表す「to be」に当たる「だ」も文末に置かれます。

(例文1-4)

「だ」を使った文でも助詞の使い方は変わりませんが(例えば助詞「は」は動詞文と同様に主題をマークします)、主題の解説部分(X=Yの関係を表す文での「Y」の部分)には助詞が使われず、直接「だ」が後接していることに注意してください。例えば、「Tomorrow is Sunday」は、「日曜日」に助詞「に」が後接した「明日は日曜日にだ」ではなく、「だ」が直接後接した「明日は日曜日だ」が正しい文です。英語でも「Tomorrow is on Sunday」とは言わないため、これは英語での前置詞の使われ方に類似していると言えます。

[3] 「だ」の丁寧形

動詞の場合と同じように「だ」にも普通形と丁寧形があり、丁寧に話す時は、丁寧形を使わなければいけません。しかし、「だ」は動詞ではないので、活用は動詞の「~ます/~ません/~ました/~ませんでした」と同じではありません。代わりに、下のような特別な活用をします。

「だ」の丁寧形の活用規則

(活用の規則と例の表)

[*74ページ脚注]

「だ」の丁寧形の否定形の活用には、否定の普通形(99ページ参照)に「です」をつける「-じゃないです(非過去)/-じゃなかったです(過去)」という形もあります。この表現は「-じゃありません/-じゃありませんでした」に比べるとフォーマル度が低いですが、これらの形を丁寧な話し方の会話で使っても間違いではありません。

なお、「だ」の非過去形が表す意味は動詞の非過去形が表す意味と少し違うので注意が必要です。前のセクションで動詞の非過去形は「習慣」と「未来」という2つの行為や活動や出来事を表すということを勉強しました。一方、「だ」の非過去形は現在の状態を表す意味しかありません。例えば、未来の出来事を示す英語の「I will be a student」という文は、日本語では非過去形を使った「私は学生です」という文では表されません。(日本語でこの意味を表すには、「なる」という動詞を使い、「私は学生になる」と言います。)

それでは、GP4-1で勉強したことを念頭に次の例文を読んでみましょう。ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

(例文1-11)

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[確認問題] GP4-1

先生に下の文をどのように言いますか。

(問題1-10)

[ここで、練習編の練習11から13をしてみましょう。]

名詞に加えて、形容詞もX=Yの関係を表す文で頻繁に使われます。日本語では、主な形容詞の種類として「ナ形容詞」と「イ形容詞」という2つの種類があります。このセクションでは、それぞれの形容詞をどのように使うのかを学習します。

[1] ナ形容詞とイ形容詞

形容詞がどちらの種類に属するかは語末で判断できます。語末の平仮名が「い」で、しかも語が i の音で終わる場合は、ほとんどの場合「イ形容詞」です。(これには少数の例外があります。その一つは82ページで学習します。)一方、平仮名「い」で終わらない語と、平仮名「い」で終わっていても i の音で終わらない語(例:有名)は全て「ナ形容詞」です。

(ナ形容詞とイ形容詞の例)

ナ形容詞という名前は、ナ形容詞が名詞を修飾するために名詞に前接する時に、形容詞の語幹と名詞の間に「な」を入れなければいけないという規則から来ています。一方、イ形容詞は、そのままの形で直接名詞の前に置くことで名詞を修飾することが出来ます。(名詞の修飾については84ページ [4] でより詳しく学習します。)

(ナ形容詞とイ形容詞が名詞を修飾する例)

[2] 形容詞文

X=Yの関係を表しYの位置に形容詞が使われている文では、ナ形容詞とイ形容詞は使われ方が異なります。ナ形容詞がYの位置で使われる文では、以前に勉強した名詞文(Yの位置に名詞が使われる文)と同様に「だ」が使われます。

(例文1-3)

これらの文を丁寧体の文に変える時は、「(名詞)だ」の文と同じ活用を使います。

(例文1-3)

一方、Yの位置にイ形容詞を使う時は、下の例文から分かるように「だ」が使われません。イ形容詞の辞書形には「to be ~」 の意味が含まれていると考えると分かりやすいでしょう。 (おいしい: to be delicious; かわいい: to be cute; 楽しい: to be enjoyable) 

(例文4-6)

では、丁寧な言い方で 「This fish is delicious」「This dog is cute」「This class is enjoyable」のような文を言うには、どうすればいいでしょうか。この場合も、やはり文末を丁寧形に変えなければいけません。イ形容詞の丁寧形は下の規則で活用します。否定形や過去形を作る時には、語末の「い」を落とさなければいけないことに注意してください。

イ形容詞の丁寧形の活用規則

(活用の規則と例の表)

非過去否定形ー辞書形の語末の「い」を落として「くありません」を加える
過去肯定形ー辞書形の語末の「い」を落として「かったです」を加える

過去否定形ー辞書形の語末の「い」を落として「くありませんでした」を加える

[*表外の注意書き1]

「イ形容詞」の丁寧形の否定形の活用には、否定の普通形(99ページ参照)に「です」をつける「-くないです(非過去)/-くなかったです(過去)」という形もあります。この表現は「-くありません/-くありませんでした」に比べるとフォーマル度が低いですが、これらの形を丁寧な話し方の会話で使っても間違いではありません。

[**表外の注意書き2]

「いい」を否定形や過去形に活用する時は、「よ」という語幹に該当する語末の形を加えます。

ここで学習したことをまとめると、ナ形容詞とイ形容詞の丁寧形の違いは以下のようになります。

(語末の形をまとめた表)

イ形容詞とナ形容詞を使った下の例文を見てみましょう。ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

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[確認問題] GP4-2 [1][2]

A. 下の表内の表現を活用しなさい。

丁寧形の活用

(表)

B. 各文は間違った、または英訳に合わない助詞を1つ以上含んでいます。その助詞を正しく直しなさい。

[話者はフォーマルな状況で丁寧に話している。]

(問題1-5)

会話中、相手の話を聞いているということを示すために、皆さんはどんなことをするでしょうか。英語での会話では、頷いたり相手と目を合わせたりするのが一般的でしょう。また、時によっては、聞いたことに対して「Uh huh, Hmm, Really?, Wow」のような短い反応をするかもしれません。このような言葉での反応は日本語では「相槌」と呼ばれ、会話を円滑に進めるために、英語での会話よりより頻繁に使われ大切です。実際に、相槌が十分でないと、話している人は相手が自分の話を聞いているか、理解しているかどうか不安になってしまいます。会話をする時は、下のような表現を使って、自分が聞いている、理解しているということを示すようにしましょう。

(例文1-6)

2から6の文末には「ね」という助詞が使われていることに気が付いたかもしれません。これは相手に同意や確認を求めたり、相手に対して同意や確認を示したりする時に使われる文末助詞です。「か」と同じように、いつも文末に置かれます。下の文とウェブサイトにある追加の例文を読んでください。

(例文7-8)

また、同じように使われる文末助詞として「よ」という助詞もあります。これは、自分の発話情報が聞き手が持ち合わせていない重要なものであるということを話し相手に強調する助詞です。

(例9-10)

文末助詞「よ」は自分の発話情報を聞き手が持ち合わせていない重要なものだと考えていることを強調するので、不必要に使うと発話が傲慢に聞こえてしまいます。例えば、下の例でBが「よ」を使ってしまうと、Aが正しい情報を知らないことを責めているように聞こえてしまう可能性があります。「よ」を使う時は間違った印象を与えてしまわないように注意しましょう。

(会話例11)

[*81ページ脚注]

*日本語では、相手の発話内容が正しいと考えるかどうかにもとづいて「はい」か「いいえ」の選択をするので、この場合、「来なかった」という相手の確認が正しくないということを示すために「いいえ」を使います。

[ここで、練習編の練習14をしてみましょう。]

[3] 主語を示す「が」と使う形容詞

1. 好きな/嫌いな

好きなことや嫌いなことは、日常的に話される話題です。この時に使われる単語 to like と to dislike は、英語では動詞ですが、日本語ではそうではありません。日本語でこれらに当たる「好き(な)」「嫌い(な)」は、それぞれ「likable/pleasing」「unlikable/displeasing」というような意味を表すナ形容詞です。下の表から分かるように、これらの語は動詞ではなく「だ」の活用を使います。

ナ形容詞「好き(な)」「嫌い(な)」の丁寧形の活用

(活用規則の表)

では、日本語で I like fish. のような文を言う時は、どうすればいいでしょうか。英語では fish は動詞 like の直接目的語ですが、日本語では「好き」が動詞ではないので、直接目的語の助詞の「を」を使って「私は魚を好きです」と言うのは正しくありません。日本語では、好きだという感情を持つ主体の「私」を主題、好きな物「魚」を文の主語にして、下のように言うことになります。

(例文1)

この文で「が」という助詞が「魚」をマークしていることに注意してください。この助詞は日本語で文の主語をマークするために使われる助詞です。他の例も見てみましょう。

[*82ページ脚注]

*「嫌い」は平仮名「い」で終わり音も /i/ で終わりますがナ形容詞です。これは覚えなくてはいけない少数の例外の1語です。

(例文2-7)

ちなみに、to love (lit. lovable)、to hate (lit. detestable) という強い気持ちの程度を表したい場合は、前に「大」をつけて「大好き(な)」「大嫌い(な)」という単語を使ってください。

(例文8-9)

[ここで、練習編の練習15-1と15-2をしてみましょう。]

[*83ページ脚注1]

*「時」は「time」という意味の名詞で、この表現は文字通りには「at the time of a child」という意味になります。「~時」の表現について176ページでより詳しく学習します。

[**83ページ脚注2]

**より自然な英訳に近い「どの季節が好きですか。」という聞き方も可能ですが、時間に関する質問でこのように「いつ」を使うのも日本語では同様に自然です。

2. ほしい

このように使用する助詞に注意が必要な語に「ほしい」という語もあります。この語に当たる英語「to want」は動詞ですが、日本語ではこの「to be wanted」のような意味を表すイ形容詞を使います。下の表から分かるように、この語は動詞ではなくイ形容詞の活用を使います。

イ形容詞「ほしい」の丁寧形の活用

(活用規則の表)

では、日本語で I want money. のような文を言う時は、どうすればいいでしょうか。「好き」「嫌い」と同じように、日本語では、ほしがっている主体の「私」が主題、ほしがられているものの「お金」が文の主語になって、下のように言うことになります。

(例文10)

この文でも「が」が「お金」をマークしていることに注意してください。下の例文とウェブサイトの追加の例文を読んでみてください。

(例文11-13)

なお、この「ほしい」という語は物に対する願望を表す時、つまり英語で「want [Noun]」と言う時にしか使えず、「want to [Verb]」 のような文を表すためには使えません。後者のような、したいことやしたくないことを表す文に関しては、後ほど128ページで勉強します。

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[確認問題] GP4-2 [3]

A. 品詞をa-cから、活用をd-fから選んで、下の表を完成しなさい。

品詞[a.動詞 b.ナ形容詞 c.イ形容詞]

活用[ (活用パターン) ]

(表)

B. 括弧内の語と丁寧形の活用を使って自分の文を作りなさい。

(問題1-6)

[4] 形容詞の名詞修飾

前のセクションでは、形容詞の文末での述部としての使い方を勉強しました。一方、形容詞が文中で名詞を修飾するために使われる場合は、77ページで見たように、規則が異なります。この場合は、イ形容詞は辞書形がそのままの形で、ナ形容詞は「な」を形容詞の語幹と修飾される名詞の間に挿入する形で使われます。

形容詞が名詞を修飾する時

(規則と例文の表)

上のような文を使った会話の例を見てみましょう。1の例に出てくる「どんな」という語は “what kind of” という意味の疑問詞で、名詞の前に直接置かれます。

(会話例1-3)

ウェブサイトにある追加の例もチェックするようにしてください。

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[確認問題] GP4-2 [4]

下の空欄に「の」か「な」または何も必要ない時は「X」を入れなさい。

(問題1-4)

[ここで、練習編の練習15-3から15-10までをしてみましょう。]

日本語の色を表す多くの表現には、名詞としてもイ形容詞としても使われるという特徴があります。

(例文1-2)

上の例文では、「white」という単語が1では「白」という名詞として、2では「白い」というイ形容詞として使われています。下の表にある全ての色を表す語には、このような名詞とイ形容詞の両方を持つという特徴があります。

(色の単語の表)

ただし、全ての色の表現がこの特徴を持っているわけではなく、下のような色の表現には名詞しかないので注意してください。

(名詞しかない色の単語の例)

なお、イ形容詞の有無にかかわらず、上の名詞のうち「~色」で終わっていない表現は「~色」を追加して名詞として使われることもありますが(例:白色、黒色、赤色、青色、ピンク色、オレンジ色、緑色、紫色)、形容詞と名詞の両方がある語が他の名詞を修飾する場合は、形容詞がより多く使われる傾向があります。例えば、「white car」と言う場合「白い車」も「白の車」も「白色の車」も全て文法的に正しい表現ですが、「白い車」という形が自然に使われることが多いため、練習時にはこの表現を使うことを意識するといいでしょう。

このような特徴に注意して、下の例文とウェブサイトにある追加の例文を読んでみましょう。

(会話例・例文3-5)

[ここで、練習編の練習16をしてみましょう。]

前の「好き、嫌い、ほしい」のセクションで主語を示す助詞「が」について学習しました。主題を示す助詞「は」と主語を示す助詞「が」の違いは、学習者にとって大変理解しにくい違いだと言われています。これは、文の主語は会話の主題であることが多く、この場合、日本語では主題としての役割が優先され助詞「は」が使われるからです。ただし、日本語には「は」ではなく「が」を使わなければいけない場合もあります。現時点では、下の2つの場合を覚えておいてください。

[1] 疑問詞が文の主語の場合

「何・誰・どこ・いつ」などの疑問詞が文の主語の場合は、いつも「が」でマークされます。これは、疑問詞が意味するのは情報の欠如であるため、欠如している情報は原則的には会話の主題にはなりえないからです。

(例文1-4)

上の文で「何は、誰は、どこは、いつは」と言ってしまったら、全て非文法的です。

次の会話で、会話が進むにつれて助詞がどのように変わっているか注意してください。AがBの家に誰が来たかが分かった後は、その人が会話の主題になりえるため、この場合でも「は」でマークされています。

(会話文5)

[2] 何かの存在について述べる場合

下の2つの会話を比べてみてください。

(会話文1-2)

会話1では、会話が進むにつれて田中さんが会話の主題になっているために、会話の最後でBがAに田中さんの場所を知らせる時には、田中さんが「は」でマークされています。一方、会話2ではAは田中さんがあそこにいるということを初めて始めて持ち出しています。会話に登場する前には田中さんは会話の主題にはなれないので、この時点では「が」でマークされています。この後で、Bが田中さんが何をしているかを聞いた場合は、その時点で、田中さんは会話の主題となり「は」でマークされることになります。

もう一つ会話の例を見てみましょう。

(会話文3)

最初の質問では、Aは試験の存在の有無を聞いているので、試験は「が」でマークされています。しかし、試験があることが分かった後では、試験は会話の主題になりえるため、いつ試験があるかを問う次の質問では、試験は「は」でマークされています。次のページの例文とウェブサイトにある追加の例文を読んでみましょう。

(例文1-4)

「は」と「が」の使い分けは簡単ではありませんが、まずはこれらの「が」を使わなければいけない場合に注意するようにしましょう。

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[確認問題] GP4-3

下の文で「が」に置き換えなければならない助詞全てに〇をしなさい。

(問題1-5)

[ここで、練習編の練習17をしてみましょう。]

次の文を見てください。

(例文1)

この文は「行く」の 丁寧形の非過去否定形「行きません」に疑問文を作る助詞「か」がついているので、文字通りには、丁寧に「Won’t you go to Tokyo? / Don’t you go to Tokyo?」と質問している文だと解釈されます。しかし、日本語では、このような否定疑問文は、何かを一緒にしようと勧誘するためにも使われます。

(例文2)

このような否定疑問文が質問と解釈されるか、勧誘と解釈されるかは文脈によります。例えば、友達が東京に行かないということを聞いた時にそれを本人に直接確認するという文脈ではこの文は前者に解釈され、東京に行こうとしている話者が友達にこの文を言っているという文脈では後者の意味になります。

また、この勧誘の「〜ませんか」に似た意味の表現に、丁寧形の動詞の文末「ます」を「ましょう」に変えた「~ましょう」という表現があります。これは、英語の「Let’s ~」の表現に当たります。

(例文3-5)

さらに、「〜ましょう」に疑問の助詞を付け加えた「〜ましょうか」という表現もあります。これは英語の「Shall ~?」の表現に当たりますが、英語に比べてより一般的に使われます。この表現は疑問詞と一緒に使って提案を促したり(「[Who/what/where/when] do you want to ~?」や「[Who/what/where/when] shall ~?」)、二者択一の質問として提案(「Why don’t we ~?」や「Shall we ~?」)や申し出(「Why don’t I ~?」や「Shall I ~?」)を行ったりするために使われます。

(例文6-7)

「~ませんか」と「~ましょうか」はどちらも「提案をする」という類似した機能がありますが、後者は前者より強いニュアンスがあります。「~ませんか」は相手が同意するかどうか分からない時に、「~ましょうか」は相手が間違いなく同意するだろうと考えられる時や既に決定されていることを確認する時に使われるという傾向があります。

(会話例8-9)

このような勧誘を断る場合は、会話例10のように、よく「ちょっと」という表現が使われます。

(会話例10))

このような状況で「いいえ、食べません」などと明示的に断ってしまうと失礼に聞こえてしまうので、注意しましょう。

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下の会話中の下線部はたいていの場合唐突すぎたり必要以上に強い印象を与えたりしてしまうと考えられます。より適当な表現に変更してください。

(問題1-2)

[ここで、練習編の練習18をしてみましょう。]

文法ポイント5. 普通形の活用と用法 [pp.94-108]

ここまでは、丁寧形を使った丁寧な話し方を勉強してきましたが、友達を作り仲がよくなるにつれて、くだけた話し方で話す機会が増えます。57ページで勉強したように、日本語では、丁寧さのレベルは第一に文末の形でコントロールされます。57ページの例をもう一度見てみましょう。

(例文1-2)

くだけた話し方では、例文1のように文末で普通形を使います。そこで、くだけた話し方を学ぶために、まず色々な品詞の普通形の活用を勉強しましょう。

[1] 普通形の概要

(各活用形のイラスト)

普通形の活用は、全ての品詞が以下の3つの特徴を共有します。

  1. 非過去の否定形は「ない」で終わり、「nai-form」とも呼ばれる。
  2. 過去の肯定形は「た」か「だ」で終わり、「ta-form」とも呼ばれる。
  3. 過去の否定形は上の「ない」と「た」を合わせた「なかった」で終わる。

これらの共通点に注意しながら、下の表を見てみてください。

普通形の活用

(活用の表)

(活用の例)

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[確認問題] GP5-1 [1]

A. 1~3の活用を表す語末形を a~cから選びなさい。

  1. 普通形 否定 非過去
  2. 普通形 肯定 過去
  3. 普通形 否定 過去

B. 下の1から11に「dictionary form」か「た」か「ない」か「なかった」を正しく入れなさい。

普通形の活用

(問題1-11)

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[2] 動詞の普通形の活用

動詞の普通形過去肯定形

(イラスト)

上で見た概要をふまえて、各品詞の普通形の活用をより詳しく見ていきましょう。まずは動詞の活用です。58ページで学習したように、日本語の動詞は3つのグループに分けられ、それぞれ活用規則が異なります。これは普通形の活用でも同じです。各グループの動詞の普通形の活用は、以下のようになります。

ル動詞の普通形の活用規則

非過去肯定形 辞書形(例)

非過去否定形 辞書形の最後の -ru を -nai に変える。(例)

過去肯定形 辞書形の最後の -ru を-ta に変える。(例)

過去否定形 辞書形の最後の -ru を -nakatta に変える。(例)

ウ動詞の普通形の活用規則

非過去肯定形 辞書形(例)

非過去否定形 辞書形の最後の -u を -anai に変える。(例)

例外1:「う」で終わる動詞(例:買う、会う、歌う)は -u を -wanai に変える。(例)

例外2:ある→ない(例)

過去肯定形 辞書形の最後の音を、下のように変える。(規則と例)

例外1:行く→行った(例)

過去否定形 辞書形の最後の -ru を -nakatta に変える。(例)

上の例外1と2はこちらにも当てはまります。(例)

不規則変化動詞の普通形の活用規則

(活用規則の表)

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[確認問題] GP5-1 [2]

下の活用表を完成しなさい。

(問題1-8)

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[3] 「だ」とイ形容詞の普通形の活用

次に、名詞とナ形容詞に使われる「だ」とイ形容詞の普通形の活用を見ていきましょう。

「だ」の普通形の活用規則 

(活用規則の表)

イ形容詞の普通形の活用規則

非過去肯定形 辞書形(例)

非過去否定形 辞書形の語末の「い」を落としてから→~くない(例)

過去肯定形 辞書形の語末の「い」を落としてから→~かった(例)

過去否定形 辞書形の語末の「い」を落としてから→~くなかった(例)

「だ」とイ形容詞の活用には類似がありますが、全く同じではありません。以下の点に注意しましょう。

  • 否定の指標「ない・なかった」の前の形は少し異なります。「だ」は「じゃ」、イ形容詞は「く」を使います。
  • 肯定形の過去は、「だ」は「だった」に、イ形容詞は「かった」に活用します。
  • イ形容詞の肯定形は、非過去も過去も、普通形から丁寧さを表す指標の「です」がなくなった形です。

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[確認問題] GP5-1 [3]

下の活用表を完成しなさい。

(問題1-4)

では、文末に普通形を使ったくだけた話し方の会話を勉強しましょう。左が丁寧体での会話、右がくだけた話し方での会話です。

(会話例1-10)

前のページの様々な例から分かるように、くだけた話し方は、文末に普通形を使うという規則以外に加えて、以下のような特徴が見られます。

1. 質問文を作る助詞「か」を使わない。

2、3、5、7、9のAの発話から分かるように、くだけた話し方ではたいてい質問の助詞「か」を使いません。質問する時は、代わりに上昇調のイントネーションを使います。

2. 文末には「だ」を使わない。

4と5から分かるように、名詞とナ形容詞の後に使われる「だ」は文末では落とされることが多いです。5の場合は4よりも少し複雑です。5のAの発話では、1のルールによって助詞の「か」が落ちて、「だ」が文末になるため、「だ」も落とされて、最終的に「誰?」だけで終わります。」ただし、文末に「か」以外の助詞がある場合は、6のBの「そうだね」のように「だ」が残るので気を付けてください。

3.「はい・いいえ」の代わりに「うん・ううん」を使う。

2と3のBの発話から分かるように、返答する際の「はい」と「いいえ」は「うん」と「ううん」に変わります。

4. 助詞がよく省略される。

文脈や状況から名詞の文中での役割が明らかな場合には、助詞が省略されることがよくあります。例えば、5の会話では「は」、7の会話では「を」が省略されています。この二つの助詞は、くだけた会話では省略されることがよくあります。他にも、「どこ、行く? (Where are you going?)」の「に」のように省略される助詞があります。ただし、文法的に省略してはいけない場合も多いですし、助詞を省略しすぎると、逆に不自然になったり、意味が分かりにくくなったりすることがあるので、このレベルでは、文を産出する時は省略しない、または最小限の省略に留めて練習し、原則的には他の人の発話でいつ、どの助詞が省略されたかが認識できればよいというレベルに留めるのがいいでしょう。

5. 使われる単語や表現が変わる。

2と3の「うん・ううん」の他にも、特にくだけた話し方に適した単語や表現があります。例えば、8の会話では相手の注意を引くために「すみません」ではなく「ちょっとごめん」が、それに対する返事のも「はい」ではなく「何?」が使われています。また、9では謝るために「すみません」ではなく「ごめん」が使われています。さらに、10から分かるように、「ありがとうございます」は「ありがとう」だけになります。(10の丁寧な話し方の「いえいえ」は「ありがとうございます」の返答として「いいえ」の代わりによく使われる言い方です。)

また、くだけた話し方では男性は一人称代名詞に「私」の代わりに「僕」や「俺」という表現を使うという傾向もあります。これについては次のページのQuick Noteを見てください。

自分や他人のことを呼ぶ時には、「私」や「〜さん」の他にも使用される表現があります。以下はその例の一部です。どの表現も「私」や「〜さん」に比べてフォーマル度が低い表現だと言えます。

1. 自身の呼称として「私」の代わりに使える表現

(1) 僕

  • 一般的に男性にだけ使われます。
  • よく子供に使われます。
  • 成人男性にも使われますが、会議や他のフォーマルな場面では使用が避けられる傾向があります。

(2) 俺

  • 一般的に男性だけに使われます。
  • 「僕」より男性的なニュアンスがあります。
  • 「僕」よりフォーマル度が低いです。

2. 他人を呼ぶ時に「〜さん」の代わりに使える表現

(1) 〜君

  • ほとんどの場合、男性を呼ぶ時にしか使われません。
  • 男の子を呼ぶ時によく使われます。
  • 話者と同世代、または話者より若い成人男性を呼ぶ時に使われることもあります。
  • よく親密さや愛着を表すために使われるため、基本的に目上の人(立場や歳が上の人)を呼ぶ時には使われません。

(2) 〜ちゃん

  • よく小さい子供を呼ぶ時に使われます。この場合は、男の子にも女の子にも使われます。
  • 大きくなるにつれて、女の子には「~ちゃん」を使い続ける一方、男の子には「~君」が使われる場合が増えます。
  • 話者と同世代、または話者より若い成人女性を呼ぶ時に使われることもあります。
  • よく親密さや愛着を表すために使われるため、基本的に目上の人を呼ぶ時には使われません。

これらの表現は、「私」や「~さん」よりインフォーマルなニュアンスがあるため、丁寧な話し方で話している時に不適切に使用すると失礼に、または子供っぽく聞こえてしまうこともあります。この理由で、現時点では、これらの表現の使用はくだけた話し方で話している時だけに留めておくことをお勧めします。学習が進みより多様な状況で日本語を使うようになるに合わせて、他のどんな状況でこれらの表現の使用が適しているかを考えてみるといいでしょう。

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[確認問題] GP5-2

A. 各文は文法的な間違い、または英訳に合わない部分を1つ以上含んでいます。その部分を正しく直しなさい。

[話者は友人にくだけた話し方で話している。]

(問題1-6)

B. 下の会話は丁寧体で書かれています。くだけた話し方で書き直しなさい。

(問題1-5)

[ここで、練習編の練習19をしてみましょう。]

GP5-2で、普通形がくだけた話し方をする時に文末でどのように使われるかということを勉強しました。しかし、普通形が使われるのはこのためだけではありません。普通形は、丁寧さのレベルにかかわらず、様々な表現の中で文末以外の場所でも使われます。ここでは、引用を表す助詞「と」を使った場合の文について勉強します。

(例文1-5)

上の全ての文では、引用を表す助詞「と」が使われています。前のセクションまでに助詞「と」は名詞に後接して and や with の意味を表すということを勉強しましたが、その他に、「と」には、文に後接してその文が引用であることを示すという機能があります。例えば、1の文では「田中さんは今週の週末に東京に行く」という文は「私」が思ったことの引用であるため、助詞「と」でマークされます。文法的には、この助詞「と」は普通形に後続しなければならないという規則があるので、上の文では「と」の前接部分が全て普通形(文中の下線部)になっています。なお、丁寧さをコントロールするのは文末の語形なので、「と」の前で普通形が使われていても、文末が丁寧形で終わっているこれらの文は丁寧な話し方の文です。上の文をくだけた話し方の文に変えるためには、下のように文末を普通形にする必要があります。

(例文6-7)

これは、普通形がくだけた話し方での文末だけでなく、丁寧さのレベルにかかわらず、文末以外の様々な場所で使われるという一例です。Grammar Point 8以降で他の表現も勉強します。

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[確認問題] GP5-3

下の文を文法的に正しい文に直しなさい。

[話者は友人にくだけた話し方で話している。]

(問題1-7)

[ここで、練習編の練習20をしてみましょう。]

92ページで勧誘の仕方や同意の求め方、表し方を学習した時に、以下のような会話を勉強しました。このような会話は、くだけた話し方の場面ではどうなるのでしょうか。

(会話文)

Aの勧誘とBの「いいですね」は、すでにこの課で勉強した規則を使って、くだけた話し方に変えることができます。しかし、最後の「食べましょう」を普通形にするためには、次のページにある意向形の活用規則に沿う必要があります。この形は「~ましょう」の普通形に当たると言えます。

意向形の活用規則

ル動詞 最後の -ru を -you に変える。(例)

ウ動詞 最後の -u を -ou に変える。(例)

不規則変化動詞 (例)

この規則に沿って、前のページのくだけた話し方の会話は、Bの返答に「食べよう」を入れることで完成できます。

この意向形は、誰かと一緒に行動を行いたいという願望だけでなく、話者が一人で何かをする意志を表す場合にも使われます。この場合「意向形 + と思う」という形が使われます。

(例文1-4)

意向形を使っていない1の文も文法的な文ですが、2の文と比べると、表されている話者の意志は弱く、どちらかと言うと、話者の将来的な予定に関する客観的な陳述のように聞こえます。

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⇒ (a)には各動詞の「~ましょう」形、(b)には意向形を書きなさい。

(問題1-5)

[ここで、練習編の練習18-1と18-2をくだけた話し方でしてみましょう。]

文法ポイント6. テ形 [pp.109-127]

ここまでに、動詞、「だ」、そしてイ形容詞の最も基本的な二つの形 (丁寧形と普通形) を勉強しました。しかし、日本語には、もう1つ同じぐらい頻繁に使われる「食べて、飲んで、して、学生で、元気で、おいしくて」のような形があります。これらの例から分かるように、この形はいつも「て」か「で」で終わるため、テ形と呼ばれます。

テ形には、大きく分けて、2つの用法があります。

  1. 2つの文をつなげるために使う。
  2. 他の様々な表現を作るために使う。

まず、1つ目の用法を見ながら各品詞のテ形の活用規則を学び、その後で2つ目の用法について学習します。

51ページで and の意味を表す助詞「と」を勉強した時に、この助詞は2つの名詞をつなげる時にだけ使われ、形容詞や文をつなげる時には使われないということを勉強しました。では、下のような2文をつなげる時は、どうすればいいでしょうか。

(例文1)

この場合、次のようにテ形を使って1文にすることができます。

(例文2)

これが、テ形の基本的な用法の1つです。下の例でも、3-bでは動詞、4-bと5-bでは「だ」、6-bではイ形容詞のテ形が2文をつなげるために使われているのが分かります。(テ形には下線が引かれています。)

(例文3-6)

なお、3のように2つの行動が「AてB」の形でつなげられた場合は、「A、それからB」という継起が含意されます。また、「AてB」の形でつなげられた文は、AがBの理由や原因(例文7)、AがBをする手段(例文8)、A状態のBでの持続(例文9)を意味することもあります。

(例文7-9)

ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

テ形は各品詞で以下のように作ることができます。

テ形の活用規則

肯定 

動詞 普通形の過去肯定形(96ページ)の語末の「た/だ」を「て/で」に変える。(例)

(名詞+)だ/(ナ形容詞+)だ 「だ」を「で」に変える。 (例)

イ形容詞 辞書形の語末の「い」を「くて」に変える。 (例、例外)

否定

動詞/(名詞+)だ/(ナ形容詞+)だ/イ形容詞 普通形の非過去否定形(96ページ)の語末の「ない」を「なくて」に変える。 (例)

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[確認問題] GP6-2

A. 下の表は各品詞をテ形に変える規則を表しています。空欄を埋めて表を完成しなさい。

(問題1-13)

B. 下の活用表を完成しなさい。

(問題1-14)

[ここで、練習編の練習21-0をしてみましょう。]

もう1つの用法として、テ形は様々な表現を作るために使われます。以下はよく使われる表現例です。(テ形には下線が引かれています。)

1. ~てください

「~て下さい」は「please give me ~」(例:ハンバーガーを下さい)を意味します。動詞のテ形をこの表現の前で使って「Please 動詞」という意味を表すことができます。「下さい」が助動詞として使われるときはたいてい平仮名で書かれることに注意してください。

(例文1-2)

2. ~てもいい

動詞のテ形を「~もいい: is also good」(例:この本もいいです)という表現の前で使って「it is okay / permitted to [Verb]」という意味を表すことができます。また、イ形容詞や「だ」のテ形を同じ表現の前に使うと「it is okay if ~ is [Adjective / Noun]」という意味を表します。

(例文3-6)

3. ~てはいけない

動詞のテ形を「~はいけない: as for ~, [it] is no good」という表現の前で使って「it is not okay / permitted to ~」という意味を表すことができます。(「いけない」は文字通りには「cannot go」という意味ですが、婉曲的に「bad; no good」という意味を表すためにも使われます。)また、イ形容詞や「だ」のテ形を同じ表現の前に使うと「it is not okay if ~ is [Adjective / Noun]」という意味を表します。「いけない」の丁寧形は「いけません」です。

(例文7-10)

4. どうやって

「どうやって」は何かをするための手段や道具を聞く時に使われる表現で、疑問詞「どう」と動詞「やる」のテ形から成っています。動詞「やる」は通常「する」よりカジュアルなニュアンスがある表現ですが、「どうやって」という表現で使われる場合はこのニュアンスは感じられないため、丁寧体の会話で使ってもくだけた話し方の会話で使っても問題ありません。

(例文11-12)

「~なくて」の他に、動詞にはナイ形の後に「で」を加えて作る「ないで」という形のテ形否定形があります。この形は「~ないでください」と「XないでY」という2つの表現で使われます。これらの表現で「~なくて」を使うのは非文法的です。

~ないでください

(例文1-2)

S1ないでS2

(例文3-4)

この表現はS1の行動がS2の行動なしで行われるという意味です。

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[確認問題] GP6-3

英訳に合うように、下の日本語の文を書き換えなさい。

(問題1-8)

114ページの例文3と5では、助詞「も」が名詞ではなくテ形の動詞をマークしています。また、文法ポイント1 では、「も」が「名詞+助詞」のまとまりをマークする場合も勉強しました。(例:私は図書館で勉強します。家でも勉強します。) このように、助詞「も」は他の助詞に比べて、より多様な要素をマークするという特徴があります。

助詞「は」にも類似した特徴があります。例えば、114ページと115ページの例文7と9では「いけない」の主題として、動詞のテ形が「は」でマークされています。次のページで他の例も見てみましょう。

(例文1-3)

「は」も「も」と同様に「名詞+助詞」のまとまりをマークすることができます。

(例文4-5)

助詞「は」は、このように多様な文の要素を主題としてマークするという機能があるために、他の要素との対照を表す場合にもよく使われます。

(例文6-8)

6から8の文は、a も b も文法的に正しい文ですが、「は」を使った文はよりはっきりと対照の意味を表しています。

「は」を他の助詞の代わりに、または他の助詞の後で使用する時は注意が必要です。上の例から分かるように、「は」は「を」と「が」を置き換えますが(例文6-b、7-b)、その他の助詞は元の助詞に後接する形で使われます(例文8-b)。これは「も」が「は・が・も」の3つの助詞は置き換えるのに対して、他の助詞には後続するという規則(47ページ参照)と基本的に同じです。ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

[ここで、練習編の練習21-1から21-7と22をしてみましょう。]

テ形を使った表現の中で大変よく使われる表現の1つに、動詞のテ形に「いる」(to exist; be) が続いた「~ている」(例: 食べている、結婚している)という表現があります。この形は、ある特定の時間的な様態を表す表現です。このセクションでは、この「~ている」について勉強します。

[1] 「~ている」の2つの意味

「~ている」の表現は、大きく分けて2つの意味を表します。

(例文1-2)

上の文を、下の文と比べてみてください。

(例文3-4)

61ページで勉強した通り、例文3と4の動詞の非過去形は「習慣」か「未来の行為」かのどちらかを表します。一方「~ている」の形は、1では動作が進行中だということ、2では過去に起こった変化の結果が継続中だということを表します。

1. 進行中の動作を表す「〜ている」

動詞が行動を表す場合、「~ている」はたいてい動作が進行中である、または進行中であったということを表します。「~ている」を使った文の意味を「~ている」を使っていない文と比較してみてください。

(例文5-8)

2. 結果の継続を表す「〜ている」

動詞が行動ではなく変化を表す場合、「~ている」以前に起こった変化の結果が継続中であるということを表します。「~ている」を使った文の意味を「~ている」を使っていない文と比較してみてください。

(例文9-12)

3. 2つの意味のつながり

「~ている」の2つの意味は「進行中・継続中」という意味でつながりがあり、それが動作の進行を表すか、結果の継続を表すかは文脈によります。動詞が動作を表す場合は、進行中であることを表す場合が多いですが、継続の意味を表すこともあります。

(例文13-15)

13の文は現在進行中の行動を意味していますが、14の文は時間の幅が広いために、継続的な意味が強くなっています。15は14の継続中であるという意味から派生して、職業を表す時に一般的に使われる文になっています。これらの文を「~ている」がない文と比べると、次のような意味的な違いが見られます。

(例文16-18)

また、この表現は下の20のような所有を表すためにもよく使われます。

(例文19-20)

動詞「持つ」は動作を表しますが、19の文は動作の結果が継続中であること、20の文は車を所有しているということを表します。

なお、20の文から「~ている」をなくした「あの人は車を持ちます」という文は不自然な文です。未来の所有を表す場合は「あの人は車を買います」などの文を使います。

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[確認問題] GP6-4 [1]

日本語の文がその英訳に合うように、a か b を選びなさい。

(問題1-9)

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[2] 「~ている」のよくある間違い

以下のような種類の動詞は「~ている」と使うと間違いが起こりやすい動詞なので、注意するようにしましょう。

1. 移動の動詞

「行く、来る、帰る」のようなある場所から別の場所への移動を表す動詞は、「~ている」の形では結果の継続を表します。

(例文1-3)

上の文は全て、移動が終わって目的地に到着し、そこにいることが継続しているという意味を表します。目標地点に移動中だという意味を表したい場合は「向かう」などの別の動詞を使う必要があります。

(例文4)

2. 瞬間的な動作を表す動詞

動作を表す動詞でも、時間的な幅が短い動作の場合は、「~ている」は動作が終了した後の結果が継続していることを表す場合が多くなります。「~ている」を使った文(5から8のaの文)の意味を「~ている」を使っていない文(5から8のbの文)と比較してみてください。

(例文5-8)

3. 出来事が自然に起こることを表す動詞

日本語には、英語では同一の語が使われる表現に、類似した別の2つの動詞が使われるという傾向があります。その1つは意志的に行う動作を表す他動詞で、もう1つは自然に起こった出来事を表す自動詞です。

他動詞(意志的に行う動作) 自動詞(自然に起こる出来事)

(他動詞と自動詞9-14の表)

このような対を表す動詞が「~ている」の形で使われた場合、意志的な動作を表す動詞は進行中の意味を表す一方、自然に起こる出来事を表す動詞は結果の継続を表します。

(例文15-20)

4.「not yet」の意味を表す場合

午後12時半に下のような質問をされたとしましょう。

(例文21)

もう食べた場合は過去形を使って「はい、もう食べました」と答えればいいです。しかし、まだ食べていない場合は、日本語では「~ている」を使って下のように答えなくてはいけません。

(例文22)

この場面で「いいえ、食べませんでした」と言うのは不自然ですし、「いいえ、食べません」と言ったら、全く別の意味になってしまいます。他の例も見てみましょう。

(例文23-25)

5.「~ている」の形にならない動詞「いる」と「ある」

動詞の非過去形は一般的に「未来」と「習慣」を表しますが、存在を表す動詞「いる」と「ある」は、その動詞自体が、存在が進行中で継続していることを表します。このためにこの2つの動詞は「~ている」の形にはなりません。

(例文26-29 「学校にいている」「うちにいていました」は非文法的)

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[確認問題] GP6-4 [2]

各文は文法的な間違い、または英訳に合わない部分を1つ以上含んでいます。文を正しく直しなさい。

(問題1-6)

[ここで、練習編の練習23と24をしてみましょう。]

日本語には「~ている」のように、テ形の本動詞の後に他の補助動詞が後接し、本動詞の意味を何らかの形で修飾する表現が色々あります。これらの補助動詞は通常本動詞として独立してそれ自体の意味を表すこともあり、補助動詞として使われる場合は必ずしもその意味をそのまま残しているとは限りませんが、本動詞としての意味と補助動詞としての意味の間にはつながりが見られます。

下は「~ている」以外のよく使われる表現です。まず「本動詞のテ形+補助動詞」の形の全体的な文法的特徴を理解してから、それぞれの表現に注目するようにしましょう。なお、本動詞として漢字で書かれる動詞でも、補助動詞としては平仮名で書かれます。

1. 見る → ~てみる

(例文)

2. しまう → ~てしまう

(例文)

3. 置く → ~ておく

(例文)

4. ある → ~てある

(例文)

5. ほしい* → ~ほしい

(例文)

[*126ページ脚注1]

「ほしい」は形容詞ですが(84ページ参照)、他の表現と同様に、本動詞を文法的に修飾する補助語として使われるので、ここで取り上げます。

[**126ページ脚注2]

この表現では「someone」は助詞「に」でマークされます。

[***126ページ脚注3]

「~てほしい」は「~くありませんでした」というイ形容詞の活用をすることに注意してください。

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[確認問題] GP6-5

A. 下の発話や会話を「~てみる」「~てしまう」「~ておく」のどれか一つを使って書き換えなさい。

(問題1-6)

B. あなたはパーティーの責任者で、パーティーが始まる前に必要な準備が全て完了しているかどうか最終確認をしています。「~てある」を使って下のことがしてあるかどうか質問しなさい。

(問題1-4)

C. 下の指示を使って「I want (A) to (B).」という意味の文を書きましょう。(A) にはあなたが (B) をしてほしい人を書いてください。

(問題1-3)

[ここで、練習編の練習25と26をしてみましょう。]

文法ポイント7. 願望・可能・受身・使役 [pp.128-138]

ここまでに、日本語の最も基本的な活用(普通形と丁寧形、肯定形と否定形、非過去形と過去形、テ形)を勉強しました。これらに加えて、日本語では、願望、可能、受身、使役の意味を表す場合にも、動詞の活用が使われます。ここでは、まずこの4つの形の基本的な文法的特徴を紹介します。

下の表の右にある文は、願望、可能、受身、使役の形の使用例です。

(例文)

「願望」「可能」「受身」「使役」という意味を付加するために、「食べる」「話す」「作る」「買う」という動詞が、それぞれ「食べたい」「話せる」「作られる」「買わせる」という形に活用しています。

このような文の丁寧さをコントロールしたり過去や否定、テ形にする時は、「願望」はイ形容詞として、他の形はル動詞として活用します。例えば、下の文を丁寧度を上げるために丁寧形に変える場合には、1の願望形はイ形容詞として、2の可能形はル動詞として活用します。

(例文1-2)

動詞「作る」を例に、下の表でこれら全ての活用を見てみましょう。(丁寧形の活用規則は61ページと78ページ、普通形の活用規則は96ページと99ページを参照してください。)

普通形

(活用表)

丁寧形

(活用表)

では、このように意味を付加するためにどのように動詞を活用するのか見ていきましょう。活用規則は3つの動詞グループ毎に違いますが、まずはそれぞれの形の基本形な語末形を覚えて、その後でそれぞれの動詞グループがどのようにその形に活用するのかをチェックしましょう。

(活用規則の表 願望 可能 受身 使役 基本語末 例)

願望

ル動詞 辞書形の語末の「る」を /-tai/ に変更。

ウ動詞 辞書形の語末の /-u/ を /-i/ に変更してから /-tai/ を加える。

不規則変化動詞 不規則に変化するが、規則は丁寧形(マス形)の活用と同じ。

可能

ル動詞 語末の「る」を「られる」に変更。(現代日本語ではカジュアルな場面での話し言葉において「られる」から「ら」を落とした「れる」だけの形も使われる。

ウ動詞 辞書形の語末の /-u/ を /-eru/ に変更。

不規則変化動詞 不規則に変化。「する」の可能形「できる」は例外で、 /-eru/ 語末を使わない。

受身と使役

ル動詞 語末の「る」をそれぞれ「られる」「させる」に変更。受身形は「ら」を落とさない可能形と同様。どちらの意味かは文脈から判断される。

ウ動詞 語末の /-u/ をそれぞれの基本語末に変更。「買う」のように辞書形が「う」 で終わる場合は /w/ の音が基本語末の前に挿入されて、それぞれ「われる」「わせる」となる。

不規則変化動詞 不規則に変化。

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[確認問題] GP7-1 / 7-2

A. 下の表を完成しなさい。

(問題1-5)

B 下の1から4の形は時制や肯定・否定、丁寧度をコントロールするためにどの活用規則を使いますか。下の a-c からそれぞれ選びなさい。

(問題1-4 願望 可能 受身 使役 丁寧形 普通形)

GP7-1の例文から分かるように、このセクションで学習している動詞の形を使う場合、文中の名詞の役割も変化するために、名詞をマークする助詞も変化します。

願望形と可能形が使われた場合、元の目的語を主語として扱うことができるようになります。動詞が「する」の場合は、元の目的語を主語として扱う傾向が特に強いです。中でも、「~をできる」という言い方は多くの状況で大変不自然に聞こえ、非文法的だと考えられることさえあるので、3の例のような文では使わない方がいいでしょう。

(例文1-3)

受身文と使役文でも助詞の変化が起きます。受身形や使役形が使われた場合、実際の動作主は助詞「に」でマークされることになります*。

(例文4-5)

それでは、前のページで見た活用と助詞の変化に注意して次の例文を読んでみましょう。ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

(例文6-16)

[*133ページ脚注]

使役文では実際の動作主が「に」ではなく「を」でマークされることもあります。この場合は、行動を許されているというよりも、強いられているという意味合いが強くなります。

(例文)

ただし、文中にすでに直接目的語が存在する上の14から16のような文では、動作主に「を」は使えません。これらの文では動作主は常に「に」で示され、行動が許されているのか強いられているのかは文脈で決まります。

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[確認問題] GP7-3

下の文を英訳に合うように変えなさい。

(問題1-8)

[ここで、練習編の練習27をしてみましょう。]

今までに勉強した通常の受身の意味を表す他に、日本語の受身形には、文の主題が誰か/何かの行為によって感情的に影響を受けたという意味を表現するためにも使われることがあります。これは英語の受身形にはない機能で、通常は迷惑や不都合などの否定的な感情を表すので、迷惑受身と呼ばれます。

(例文1-2)

「窓」が主題の助詞「は」でマークされている「窓は田中さんに開けられました」という普通の受身に対して、2は主題の「私」が動作主の「田中さん」の「窓を開ける」という行為によって迷惑を被り感情的に影響を受けたということを表す迷惑受身です。このような迷惑受身は、影響を受けた対象が主題として「は」でマークされ、影響を与える動作主が、通常の受身文での動作主と同じように、「に」でマークされます。下の他の例文も見てみましょう。

 (例文3-5)

なお、行為によって影響を受ける対象がいる受身文では、主題になるのは原則的に影響を受ける対象自身で、その所有物や体の一部ではありません。例えば、下の例文6は、文法的には間違いだとは言えませんが、上の3の例文に比べて、自然な文ではありません。

(例文6)

同様に、たいていの場合、下の例では7の文が使われ、8の文は不自然だと受け取られます。

(例文7-8)

誰かに何かをさせられて感情的に影響を受けたという状況を表す時には、迷惑と受身を組み合わせて使います。その場合は動詞をまず使役形にしてその後で受身形にするので気をつけてください。また、使役受身では動作を強いるという行為者と実際に動作をする(させられる)動作主という二人の動作主が存在することになります。このうち、動作をさせられる動作主は感情的に影響を受ける対象と同一人物のため「は」でマークされ、動作を強いる行為者が動作主として「に」でマークされます。

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[確認問題] GP7-4

あなたは誰かの行為によって迷惑を被り感情的に影響を受けました。迷惑受身を使って下の各状況を表しなさい。

(問題1-11)

[ここで、練習編の練習28をしてみましょう。]

135ページと118ページで「誰か」と「何も(+neg)」という単語を勉強しました。これらの表現はどちらも「疑問詞+助詞(か/も)」という形で作られており、この形は、下の表に見られるように、他の疑問詞とも同様の形で使われます。(「いつも」だけは例外で、「always」という意味の単語になるので注意してください。)

(表)

「疑問詞+助詞(か/も)」がどのように使われているかに注意しながら次の例文を見てみましょう。「疑問詞+も」を使う場合は文を否定形にしなければいけないことにも注意してください。

(例文1-2)

上の例で助詞「を」と「が」が「か/も」で置き換えられていることにも注意してください。最初に47ページで勉強した「も」の置き換え規則(「も」は「は、が、を」を置き換えるが、他の助詞は置き換えない)がここでも当てはまります。特に置き換えられない元の助詞の位置には注意が必要です。元の助詞が置き換えられない場合、それらは「か」の後、そして「も」の前に残ります。

(例文3-4)

「いつか」は「いつ」と同じように、時間の助詞「に」が必要ない単語です。(67ページ参照)

(例文5)

[ここで、練習編の練習29をしてみましょう。]

文法ポイント8. 名詞修飾 [pp.139-150]

[1] 名詞を修飾する

文中では、様々な形で名詞を修飾することで、その名詞の詳細な情報を伝えます。以下のE2からE5の文では、house という名詞が他の名詞や形容詞、そして節で修飾されています。(修飾している要素は下線、修飾されている名詞は太字で表されています。)

(例文E1-E5)

上の例文を見ると、英語では、E2からE4のように修飾する要素が名詞の前に来る場合と、E5のように後に来る場合があることが分かります。しかし、日本語では、名詞を修飾する要素は必ず修飾される名詞の前に置かれます。下の例は、各品詞の名詞修飾の規則と上の英文に対応した日本語の例文を提示しています。特に、E5とJ5の間の文構造の違いに注意してください。

(例文J1-J5)

[2] 名詞修飾の規則

様々な名詞修飾の中で、節が名詞を修飾する文は文構造が複雑になることが多いため、注意が必要です。次の文を見てみましょう。修飾している節は下線、修飾されている名詞は太字で表されています。

(例文1)

この文から、名詞修飾について、下の3つの規則に注目してください。

1. 名詞修飾節は普通形で終わらなければならない。

名詞修飾内の動詞は「買った」は普通形です。これを丁寧形にした「これは私が日本で買いました本です」という文は非文法的です。

2. 英語の that に当たる関係詞はない。

名詞修飾節と修飾される名詞の間(「買った」と「本」の間)には追加の語は何も入りません。語や助詞を追加して「これは私が日本で買ったの本です」などと言うのは非文法的です。

3. 名詞修飾節の中では主題をマークする助詞「は」は使われない。

日本語では「私は日本で本を買いました。」のように、文の主語「私」が同時に主題でもある場合、主題の助詞「は」でマークされることが多いということを勉強しました。しかし、「これは私は日本で買った本です」という文は非文法的です。名詞修飾節内の主語に当たる名詞は「は」ではなく「が」でマークしなくてはいけません。

これらの規則を念頭に、他の例文も読んでみましょう。名詞修飾内には様々な動詞の形がありますが(過去形 (2, 4, 5, 7, 9, 10, 11)、否定形 (9)、願望形 (6, 7)、可能形 (8, 9)、受身形 (10)、使役形 (11))、これらは全て普通形であることに注意してください。

(例文2-11)

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[確認問題] GP8-1

下の文を英訳に合うように変えなさい。

(問題1-11)

[ここで、練習編の練習30をしてみましょう。]

[1] 「の」を使った名詞化

下の文を見てください。

(例文1-2)

文 1-c と 2-c はそれぞれ、動詞「speak」「bring」を、「is fun」の主語、または「I forgot」の目的語にするために、正しく名詞化(名詞に変えること)していないので、どちらも非文法的です。このセクションでは、このような名詞化を行う時の日本語の文法規則について勉強します。日本語では、この類の名詞化には、形式名詞「の」を使うことになります。

上の例文を日本語にすると、以下のようになります。

(例文3-4)

3-c と 4-c が非文法的である理由は、動詞が助詞「は」「を」の前に直接置かれているからです。一方、3-b と 4-b が正しい理由は、「話す」「持って来る」の後に置かれた「の」が「日本語を話す」「教科書を持って来る」という節を正しく名詞化しているからです。

この語は前に習った助詞ではなく名詞なので、前のセクションで学習した名詞修飾の規則に従って使われるということに注意してください。下の文では「の」で名詞化される部分は下線で表されています。ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

(例文5-7)

なお、英語の「~ing」で終わる形は動名詞(名詞化された動詞)としても、現在分詞(「be ~ing」の形で進行中の動作を表す)としても使われますが、「の」には前者の動詞を名詞化するという機能しかなく、後者の進行中の動作を表す機能はありません。この後者の意味を表す時には、118ページで勉強した「~ている」を使います。

(例文8)

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[確認問題] GP8-2 [1]

各文は文法的な間違いを1つ含んでいます。文を正しく直しなさい。

(問題1-4)

[ここで、練習編の練習31をしてみましょう。]

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[2] 「こと」を使った名詞化

日本語では、「の」に加えて、「こと」という名詞も名詞化のために使われます。下の2から5は「こと」をなくした場合は全て非文法的です。

(例文1-5)

名詞化のために使われる「の」と「こと」は、どちらも意味をほとんど変えることなく使える場合が多いですが*、「こと」しか使えない表現もあります。下は「こと」を使った基本的な表現で、これらに「の」を使うと非文法的になってしまいます。名詞化に使われる「の」と「こと」の違いはわずかなことがありますが、まずは、「こと」しか使えない下のはっきりした表現を覚えることから始めましょう。

1. ~ことができる

(例文)

「できる」は「する」の可能形です。(130ページ参照)上の1つ目の文は「読む」の可能形を使って、意味を変えることなく「私はこの漢字{を/が}読めます」と言い換えることもできます。

出来る is the potential form of する. (See p.XXX.) The example sentence on the left can be rephrased using the potential form of the verb 読む as <私はこの漢字 {を/が}読めます> with no change in meaning.

[*145ページ脚注]

一般的に「の」は具体的に知覚していることに、「こと」はより抽象的なことに使われるという傾向があります。例えば、下の1つ目の文では「見る」という具体的な知覚行為の対象を名詞化しているために「の」を、一方、2つ目の文では「知る」という抽象的な知覚の対象を名詞化しているために「こと」を使っています。

(例文)

2. ~ことがある

(例文)

この表現は「こと」の前の語の時制で意味が変わるので注意してください。「Non-past + ことがある」は「there are times when ~」や「sometimes ~」という意味になる一方、「Past + ことがある」は「have had the experience of ~ing」や「have ~ed before」という意味になります。

3. ~ことにする

(例文)

「Noun をする」は “do Noun”という意味ですが、「Noun にする」は「decide on Noun」か「go with Noun」という意味になります。

(会話例)

4. 〜ことにしている

(例文)

この表現は表現3の「~ことにする」に「〜ている」を加えた表現です。この「〜ている」は出来事の結果の継続を表すため、この表現では話者が以前に決定したことが現在まで継続しているということを表します。何かを決定してそれを継続しているということから派生して上のような意味で使われます。

5. ~ことになる

(例文)

「Noun になる」は “become Noun” という意味です。

(例文)

6. 〜ことになっている

(例文)

この表現は表現5の「~ことになる」に「〜ている」を加えた表現です。4の表現と同様、この「〜ている」は出来事の結果の継続を表すため、この表現では以前に決定されたことが現在まで継続しているということを表します。何かが決定されてそれが継続しているということから派生して上のような意味で使われます。

7.(Xは)~ことだ

(例文)

「だ」が名詞化された動詞に後接する時は、常に「こと」が使われ「の」は使われません。

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[確認問題] GP8-2 [2]

A.「こと」を使って次の文を英訳に合うように変えなさい。

(問題1-9)

B. 括弧の中の正しい方を選びなさい。

(問題1-8)

[「~ことができる」を使って練習編の練習27-4をしてみましょう。また練習32, 33, 34をしましょう。]

名詞化に使われる「こと」は、もともと「thing」という意味の名詞です。

(例文1-2)

また、日本語には「thing」の意味を表すもう1つの単語として「もの」という単語があります。「こと」と同じように、「もの」もほとんどの場合、「もの」を修飾する要素を伴って使われます。

(例文3-4)

原則として「こと」は無形のもの、「もの」は有形のものに対して使われます。

(例文5-6)

名詞化のために使われるのは「こと」だけで、「もの」は使われないことに注意してください。

147ページの「~ことになる」という表現で見たように、動詞「なる」は助詞「に」を伴って「Nounになる: become Noun」の形で使われます。(「なる」は何かが何か他のものに変化するという意味を表すため、ここでは助詞「に」が変化の方向を表すために使われると考えるといいでしょう。)この形は名詞だけでなくナ形容詞を使った場合でも使われます。

(例文1-4)

ただし、「なる」の前にイ形容詞を使う場合は、「に」を追加するのではなく、形容詞の語末の「い」を「く」に変えて「イ形容詞+くなる」という形になるので注意してください。

(例文5-6)

ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

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下の各問題は文法的な間違いを1つ含んでいます。間違いを直して文を正しくしなさい。

(問題1-4)

文法ポイント9. 文末表現 [pp.151-166]

述部の位置と同様に、日本語では、話者の気持ちや考え、判断を表す表現も文末に置かれます。例えば、下に再掲した106ページで勉強した文でも「~と思う」が文末に置かれ、それが話者の考えであることを表しています。

(例文1-2)

日本語にはこの他にも、同じように使われる様々な文末表現があります。基本的な表現は以下で導入されています。まず基本的な特徴と文法的な機能を理解してから、各表現に注目するようにしましょう。

まず、次のページの例文で、よく使われる話者の気持ちや考えや判断を表す文末表現(下線)を見てみましょう。下の例文から分かるように、10の表現を除いて、これらの文末表現の前に来る節は、基本的に全て普通形で終わります。(普通形については94ページを参照。)「帰りますと思います」や「留学しますかもしれません」などのように、この部分を丁寧形で終わると非文法的な文になるので注意してください。

[1] ~と思う

(例文)

[2] ~かもしれない(丁寧形は「かもしれません」)

(例文)

[3] ~つもりだ

(例文)

[4] ~そうだ

(例文)

[5] ~みたいだ(6よりフォーマル度が低い)

(例文)

[6] ~ようだ(5よりフォーマル度が高い)

(例文)

[7] ~はずだ

(例文)

[8] ~だろう/~でしょう(丁寧形)

(上昇調イントネーション it is probably ~; 下降調イントネーション ~, right?)

(例文)

[9] ~のだ/んだ(状況と発話の関連を引き立てる表現。詳しくは「GP9-3 [9] ~のだ/~んだ」を参照。)

(例文)

[10] 語幹* + そうだ

(この表現は語幹が前接します。4とは違う表現です。)

(例文)

[*152ページ脚注]

動詞はマス形から「ます」を除いた部分、形容詞は活用で変化しない部分(イ形容詞から「い」を除いた部分、ナ形容詞の「な」を含まない部分)のことです。


[p.153] Quick Note: 文末表現を使った時の丁寧さとフォーマル度

文末表現はいつも普通形が前接しますが、57ページで勉強したように、文末表現自体は文全体の丁寧さのレベルを決定するために、普通形にも丁寧形にも活用します。

(例文1-4)

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[確認問題] GP9-1

次の1から7の文を英訳に合うように変えなさい。

(問題1-7)

 

前のセクションで、文末表現の前に来る節は基本的に普通形で終わることを述べました。しかし、この規則には1つ例外があります。それは非過去肯定の「ナ形容詞/名詞 + だ」です。特に「だ」が使われない場合に注意して、下の規則を見てみてください。

[1] ~と思う/[4] ~そうだ(伝聞) 接続規則:普通形(通常の規則)

(例文)

[2] ~かもしれない/[5] ~みたいだ/[8] ~だろう 接続規則:「だ」を削除

(例文)

[3] ~つもりだ/[6] ~ようだ/[7] ~はずだ 接続規則:ナ形容詞+な/名詞+の

(例文)

[4] ~んだ/のだ 接続規則:ナ形容詞+な/名詞+な*

(例文)

*「のだ/んだ」の前では、名詞は「名詞+の」ではなく「名詞+な」となるので気を付けてください。

ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

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[確認問題] GP9-2

文末表現の前の空欄に非過去肯定形の正しい形を入れなさい。何も必要ない場合はXを入れなさい。

(問題1-8)

ここでは、各表現を使う際に注意する必要がある点について勉強します。

[1] ~と思う

「~と思う」は前接する接が話者自身の気持ちや考えであることを表す表現です。

(例文1)

日本語では、肯定否定のコントロールは「~と思う」の前の節でコントロールされる傾向があります。これは「I don’t think this movie is interesting」のように、一般的に「think」の部分で肯定否定をコントロール英語とは異なります。

また、この表現を使って自分以外の人の気持ちや考えを伝える場合には、通常「~思う」ではなく「~と思っている」という形で使わるので注意してください。例えば、下の例文2は田中さんが話者ではないため「~と思います」と言うのは不自然です。

(例文2)

なお、話者自身の行動について話す場合は、「~と思う」の前に意向形*を使った文と、そうでない文の違いにも注意してください。

(例文3-5)

3は自分の将来の行動に対する推測を表しているような文で、一方、4と5は話者のその行動をすることに対する強い意志を表しています。

4と5の違いは、4は話者が発話時にその意志を固めたようなニュアンスがある一方、5は話者がその意志を発話時の前から持っていたというニュアンスがあるということです。これは後者の文で「~ている」が119ページで勉強した出来事の結果の継続(ここでは以前に固めた意志が継続しているということ)を表すためです。

[*156ページ脚注]

意向形は107ページで話者の何かをするという意志を表す表現として学習しました。

[2] ~かもしれない

「~かもしれない」は、話者が「かもしれない」に前接する節の内容が正しい可能性があると思っていることを示す表現です。何かが正しくない、または過去の出来事の可能性について考えを述べる場合は「かもしれない」の前の節を否定形(例文7)や過去形(例文8)にします。「~かもしれない」は「ない」で終わっており、厳密には文法的に否定形ですが、「~かもしれる」という肯定の形で使われることはないので注意してください。

(例文6-8)

[3] ~つもりだ

「~つもりだ」は話者の意志を表す表現ですが、日本語では非過去形が未来の時制を表すために、下の2文はどちらも話者の将来の行動を表します。

(例文9)

しかし、話者の意志にが文の中心的な意味になっている場合は「つもり」の使用が不可欠になります。例えば、下の10から12の文で「~つもりだ」を省略して「起きます」「買いました」「買いませんでした」と言うことはできません。

(例文10-12)

また、「つもり」に前接する節が過去形の場合(13-b)や性質や状態を表す場合(14-b)は、話者の意志ではなく、話者が節の内容が正しいということに自信を持っているということを表します。この使用には、話者が、他の人はそうではないと考えるかもしれないと思っているというニュアンスが含まれます。

(例文13-14)

ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

[ここで、練習編の練習35をしてみましょう。]

[4] ~そうだ

「~そうだ」は伝聞情報を伝える表現です。情報元をはっきり示したい時は「~そうだ」と一緒に「~によると」という表現が使われます。

(例文15)

また、伝聞情報を伝えるためには、「~と聞いた」や「~と言っていた」という表現も使われます。

(例文16-17)

くだけた話し方での会話では「~と聞いた」と「~と言っていた」の方が「~そうだ」よりずっと多く使われます。ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

また、「そう」を使う表現には、直接的な知覚(通常は視覚)の情報に基づいた話者の推察を表す「語幹+そうだ」という表現もあります。(例:雨が降りそうです。: It looks like it will rain.)この表現は164ページで詳しく勉強します。

[5] ~みたいだ/[6] ~ようだ

「~みたいだ」と「~ようだ」は、話者が状況を評価して導き出した結論を表す表現です。一般的に「~みたいだ」はよりくだけた話し方の場面で、「~ようだ」はよりフォーマルな場面で使われるという傾向があります。

(例文18 話者は財布がないことに気付いた 例文19 多くの人が写真を撮っている)

また、これらの表現は、話者が何かが他の何かと似ていると判断した時に、その直喩を示すためにも使われます。

(例文20-21)

これらの表現を使った文が話者の推測に基づく判断を表すのか、何かを叙述するための直喩を表すのかは文脈によります。例えば、さらなる文脈がない場合は、例文22は「ドイツ語だと思う」という意味にも「(この言葉はドイツ語ではないけれど)ドイツ語のように聞こえる」という意味にもなります。

(例文22)

なお、この2つの表現は「AみたいなB・AようなB: B like A; B such as A」の形で文中でもよく使われるます。この用法については208ページで詳しく勉強します。

[7] ~はずだ

「~はずだ」は客観的な判断材料に基づいた話者の確信や期待を表します。

(例文23-25)

実際の状況が話者の確信や期待通りにならなかった場合は、「~はずだ」を過去形にします。

(例文26)

なお、「〜はずだ」は上の26のように、よく英語で「supposed to ~」と訳されますが、この二つの表現は意味的に必ずしも常に一致するわけではないので注意してください。英語の「supposed to ~」は義務や自分自身の決定済みの予定を述べる場合にも使われますが、日本語の「~はずだ」はそのような意味では使われません。このような場合は「~なくてはいけない」や「~ことになっている」(それぞれ114ページ、147ページを参照)のような表現を使いましょう。

(例文27-28)

[8] ~だろう

「~だろう」には、話者の推量や主観的な意見を不確かな結論として述べる用法と、そのような自分の結論の信憑性を聞き手に確認する用法があります。一般的に前者は文末が下降調のイントネーションになり、後者は上昇調になります。また「~だろう」の丁寧形は「~でしょう」ですが、この「~でしょう」は後者の確認の用法として、くだけた話し方でも使われるので注意してください。

下降調イントネーションの「~だろう」(it is probably ~)

下降調で用いられる「~だろう」は、話者の考えを推量や主観的な意見として述べ断定を避けるという意味で「~と思う」に近い意味合いがあります。しかし、100%の結論ではないにしろ、この表現は自分の意見が正しいと自信を持っていることを表すため、会話では必要以上に硬く聞こえることがあります。典型的な使用例は、天気予報士が天気予報の原稿を読む場合です。

(例文29 天気予報士が天気予報の原稿を読んでいる)

このために、普段の会話で話者の考えを単に述べる場合は、「~だろう」は通常「~と思う」が伴った形で使われます。

(例文30)

上のBの発話は「だろう」を省略しても大変自然な文ですが、「だろう」があることで、あくまでBの推量だという意味合いが強まります。

書き言葉では「~だろう/~でしょう」は研究論文や記事、意見などを書く際に断定を避ける表現としてよく使われます。例えば、次の文では、「~だろう」や「~でしょう」が使われていることで、断定的な意味合いが避けられ、印象が柔らかくなっています。

(例文31-33)

これらの文の文末から「~だろう」や「~でしょう」を除いて「なくならない」「よくなる」「言えます」で文を終えた場合、それらは自分の意見や結論を事実として断定的に述べているということになります。ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

上昇調イントネーションの「~だろう」(~, right?; ~, isn’t it?)

上昇調のイントネーションを伴うことで、「~だろう・~でしょう」は前接する節の内容の信憑性を聞き手に確認するという意味を持ちます。この用法はフォーマル度が低く、基本的にくだけた話し方の会話だけに限定されます。特に、目上の人(先生、上司、年上の人、先輩)と話している時は使わないようにしましょう。また、この用法に関しては、丁寧形の「~でしょう」がくだけた話し方でも使えるという特徴があります。

(会話例34-36)

上のくだけた話し方での会話例では「~でしょう」の代わりに「~だろう」を使うこともできますが、この用法で「~だろう」を使うとより強いニュアンスになるため、この用法は一般的に男性的な表現だと考えられています。使用する際にはこの点を考慮してください。

[p.162] Quick Note: 同意を求める「~だろう/~でしょう」の用法

確認の意味の「~だろう」と「~でしょう」は下降調でも発せられることがありますが、この場合は、話者が聞き手に同意を求めているような意味合いになります。

(例文1-3)

この用法は自分の意見を聞き手に押し付けるようなニュアンスになってしまうこともあるので、注意が必要です。

[ここで、練習編の練習36をしてみましょう。]

[9] ~のだ/~んだ

日本語の文には、物事をありのまま言い表す言い方と、物事を特定の状況や事情や文脈に対しての説明として言い表す言い方があります。今まで勉強して文は全て前者の文です。後者のような表し方のためには、日本語では文末表現「~のだ」か「~んだ」を付け加えます。次の例文を見てみましょう。

(例文37-38)

「来ませんでした」は、例えば「8時にバスが来ましたか」のような質問の答えとして使えます。一方、「来なかったんです」は次のような場合に使われます。

(会話例39)

学生は「バスが来なかった」ことを「遅れたこと」の説明として言い表しているので、文末に「~んです」を使っています。また、この会話では先生の質問にも「~んです」が使われています。これは、先生が「遅れたこと」への説明を求めているからです。これらの文で「~んです」を使わないと不自然な文になってしまいます。

「~のだ」と「~んだ」の違い

「~のだ」と「~んだ」の使い分けは、原則的には次のような規則が見られます。

1.「~のだ」は書き言葉で、「~んだ」は話し言葉で使われる。
2. くだけた話し方で、文末の「だ」の省略が起こり「ん」が文末になった場合は、「~ん」ではなく「~の」が使われる。この「の」を使って、質問を「の」で終える場合は特に多い。
3. くだけた話し方で、質問文ではない文を「~の」で終えるのは、よく女性的な表現だと受け取られる。「~の」を使った質問の返答で、「~んだ」や「~の」を完全に落として答えるのも珍しくない。

(会話例40-41)

~のだ/~んだ」の使用と不使用

「~のだ/~んだ」は話者が説明を求めたり与えたりする意味合いがある表現のために、必要以上に強いニュアンスを与えてしまうことがあります。例えば、41のAの質問には「~んだ」が使われているため、説明を求めた強いニュアンスが感じられます。親がはっきりしない子供に向かって「決めなさい」というニュアンスを含んで聞く場合には、この質問は適当だと言えますが、単なる興味で行くかどうかを聞きたい場合には、「行きますか。行きませんか。」や「行く?行かない?」のように「~んだ」を使わないで聞いた方がいいでしょう。40のAの質問で「~んだ」が正しい使用だと考えられる理由は41とは異なります。これは、AがBの様子がおかしいということに気づいて質問をしている場面なので、説明を求める強い言い方は、説明の強要や説明がないことへの非難ではなく、Aの親切な気遣いを表していると取られます。同様に、下の例のように、相手を褒めた後での質問に使われる「~んだ」も、友好的な興味として受け取られます。

(会話例42-43)

[ここで、練習編の練習37をしてみましょう。]

[10] ~そうだ

前のセクションで伝聞を表す「~そうだ: I hear ~」という表現を勉強しましたが、「~そうだ」には物事の特性や性質や行動などに関して、直接的な知覚情報(主に視覚と聴覚)に基づいた印象からの推察を表すという用法もあります。この意味で使われる場合は「~そうだ」に前接する節は普通形ではなく、下のような語形が使われます。なお、「~そうだ」の前にはイ形容詞がよく使われる傾向があり、一方名詞は使われません。

イ形容詞 [語形]普通形から最後の「い」を落とす (語形の例、例文44-45)

ナ形容詞 [語形]辞書形から「だ」や「な」がない形 (語形の例、例文46)

動詞 [語形]マス形語幹(マス形から「ます」を除いた部分) (語形の例、例文47)

否定形 [語形]ナイ形の最後の「い」を「さ」に替える (語形の例、例文48-50)

この用法の「~そうだ」はあくまで直接的な知覚情報に基づいた印象からの推察を表すので、44の文は食べる前にしか使えません。一口食べて味が分かった後では「~そう」をなくして「おいしいです」と言わなければなりません。同様に、46もその人を知る前、47も雨が降り始める前にしか使えません。

また、この表現は第三者の願望や感情に関する話者の印象を言い表す場合にもよく使われます。これは話者にとって第三者の願望や感情は自分が感じるものではなく推察が必要なためです。

(例文51-52)

これらの文に「~そうだ」がない場合は間違いです。

(例文53-54)


[p.165] Quick Note: 「かわいい」と「かわいそう」

「~そうだ」を使わなくてはいけない場合があるように、「~そうだ」を使ってはいけない場面も存在します。1つの例は「かわいい」です。例えば、鳥がかわいいことを言う場合、これは直接的な知覚情報だけから受ける推察を伴わない印象のため、「~そうだ」は使われません。日本語には「かわいそう(な): pitiful; pathetic; pitiable」というナ形容詞があり、これは「cute-looking」の意味とはかなり違うので、特に注意する必要があります。

(例文1-2)

なお、「~そう」は「AそうなB: a B that looks (like it’s) A」という形で文中で使われることもあります。この用法については209ページで詳しく勉強します。

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[確認問題] GP9-3 [10]

「~そうです」を使って次の各文を訳しなさい。

(問題1-11)

[ここで、練習編の練習38をしてみましょう。]

文法ポイント10. 複文 [pp.167-191]

ここまでは基本的に1つの節からなる単文を中心に学習してきました。この課では、これら基本的な単文構造を理解した上で、複数の節や単文をつなげて作る複文について勉強します。様々な表現を使って複数の単文をつなげることで、より複雑な考えや状況が表現できるようになります。

日本語では、1つ目の文の文末に様々な複文表現を付加することで、2つの単文をつなげた複文を作ることができます。下に様々な複文表現を「S1+S2」の形で使った複文表現の例があります。複文表現(下線)が全て「S1」の文末に位置していることに注意してください。また、注記がない場合、S1には普通形を使います。

[1] S1 [テ形]、S2

(例文)

[2]  S1 けど S2

(例文)

S2が丁寧形の場合、S1は丁寧形でも普通形でもよい。S2が普通形の場合は、S1も普通形でなくてはならない。

[3] S1 が S2

(例文)

S1に丁寧形を使うか普通形を使うかはS2による。S2が丁寧形の場合、S1も丁寧形でなくてはならない。S2が普通形の場合、S1も普通形でなくてはならない。

[4] S1 から S2([5]よりフォーマル度が低い)

(例文)

S2が丁寧形の場合、S1は丁寧形でも普通形でもよい。S2が普通形の場合は、S1も普通形でなくてはならない。

[5] S1 ので S2([4]よりフォーマル度が高い)

(例文)

ほとんどの場合、S1は丁寧形。しかし、大変フォーマルな場面では、S2が丁寧形の場合、S1も丁寧形になりえる。

[6] S1 時に S2

(例文)

[7] S1 前に S2

(例文)

S1はいつも非過去形。

[8] S1 後で S2

(例文)

S1はいつも過去形。

[9] S1 [テ形] から S2

(例文)

[10] S1 [マス語幹] ながら S2

(例文)

S1とS2の動作主は同一でなければならない。動作主が異なる場合は下の[11]や[12]が使われる。また、2つの動作の間に主動作と付帯的動作がある場合はS2に主動作が置かれる。

[11] S1 間、S2

(例文)

S1はいつも非過去形。

[12] S1 間に S2

(例文)

S1はいつも非過去形。

[13] S1 まで S2

(例文)

S1はいつも非過去形。

[14] S1 までに S2

(例文)

S1はいつも非過去形。

[15] S1 ために S2

(例文)

(1)の意味ではS1はいつも非過去形で、S1とS2の動作主は同一でなければならない。

[16] S1 ように S2

(例文)

S1はいつも非過去形。

[17] S1 [タ形] ら S2

(例文)

タ形は96ページを参照。

[18] S1 [バ形]  S2

(例文)

バ形は184ページを参照。

[19] S1 なら S2

(例文)

[20] S1 と S2

(例文)

S1はいつも非過去形。

[21] S1 [テ形] も S2

(例文)

[22] S1 のに S2

(例文)

[23] S1 か(どうか)S2

(例文)

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[確認問題] GP10-1

次の文を英訳に合うように変えなさい。

(問題1-17)

S1が普通形で終わる表現

前のセクションで、注記がない場合、S1は普通形で終わると述べました。しかし、非過去肯定の「ナ形容詞/名詞 + だ」の使用規則はもう少し複雑です。これらが普通形の「ナ形容詞/名詞 + だ」で終わるのは、次の表現の前で使われる時だけです。

[2]  S1 けど S2

(例文)

[3] S1 が S2

(例文)

[4] S1 から S2

(例文)

[20] S1 と S2

(例文)

他の表現のS1の接続規則

規則1 「だ」を削除

(該当表現と例文)

規則2 ナ形容詞の後では「な」、名詞の後では「の」

(該当表現と例文)

規則3 ナ形容詞の後も名詞の後も「な」(文法ポイント9の文末表現「~のだ」と同様)

(該当表現と例文)

(「[16] S1ようにS2」の表現ではS1の末にナ形容詞や名詞が使われないため、ここに含まれていません。)

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[確認問題] GP10-2

複文表現の前の空欄に非過去肯定形の正しい形を入れなさい。何も必要ない場合はXを入れなさい。

(問題1-11)

ここでは、GP10-1で導入された各表現を使う際に注意する必要がある点について勉強します。

[1] 「~から」や「~ので」を使って理由を述べる

ほとんどの場面で、理由を表す「[4] S1からS2」と「[5] S1のでS2」は置き換え可能です。

(例文1-2)

しかし、この両表現を比べると「ので」のほうが「から」よりフォーマルなニュアンスがあります。Bが遅刻して謝っているという下の会話を見てみましょう。

(会話例3)

上の丁寧な話し方の会話で「から」を使っても間違いではありませんが、丁寧に謝るためには、よりフォーマルな「のだ」の方が適切です。一方、くだけた話し方の会話で「ので」を使っても間違いではありませんが、「ごめん」や「遅れちゃった」などのくだけた表現とのフォーマル度が一致せず、少々不自然に聞こえます。

[*175ページ脚注]

「~ちゃう」は「~てしまう」のくだけた言い方です。この表現は219ページで勉強します。

「どうして」という質問に対して答える時は、余計な繰り返しを避けるために、よく「普通形 + からです」という形が使われます。

(会話例4)

上の4で、Bは「歌が上手で話も面白いから、この歌手が好きです」と答えることもできますが、「~からです」を使うことで「この歌手が好きです」の部分の繰り返しを避けることができます。なお、この表現では「から」しか使えず、「~のでです」とは言えないので注意してください。

[ここで、練習編の練習39をしてみましょう。]

[2] 時間の関係を表す表現

以下の表現は、全てS1とS2の間の時間関係を表します。

(該当表現)

これらの表現のS1は、[9]と[10]の例外を除いて、が普通形で終わります。[9]のS1はテ形、[10]はマス形語幹で終わります。

また、[9]は、理由を表す「[4] S1 から + S2」に形が似ているので気を付けてください。

(例文1-2)

ほとんどの場合、[9]の表現は「[8] S1 後で S2」と置き換え可能です。

「[10] ~ながら」は1人の人が2つの動作を同時に行うことを表す表現で、S1とS2の動作主は同じでなければいけません。また、2つの動作の間に主動作と付帯的動作がある場合は、S2に主動作が置かれます。

(例文4)

[9]と[10]を除いた全ての表現は、S1に使われる時制に特に注意が必要です。原則的に、これらの表現では、S1の時制は、発話時を基準とした時間関係でなく、S2を基準とした時間関係を表します。この点を理解するために、まず、下の「[7] ~前に」と「[8] ~後で」の表現の例を見てみましょう。

(例文5-8)

S1がS2の後に起こる例文5と6「前に」の文では、S1は非過去形になります。これはS2が起こった時点でS1はまだ完了していない、つまりその時点では将来の出来事だからです。対照的に、S1がS2の前に起こる例文7と8「後で」の文では、S1は過去形で終わります。これは、S2が起こった時点で、S1はすでに完了している過去の出来事だからです。

ここでS1の時制が絶対時制ではない、つまり、S2との時系列的な関係を示しているのであって、過去に起こった出来事かどうかということを示しているわけではないことに注意してください。6に見られるように、S1が前日に起こったことであっても、「食べる」は非過去形で終わっています。同様に、7ではS1は翌日に起こることですが、「食べた」と過去形で終わっています。

「[13] ~まで」と「[14] ~までに」の表現でも、S1の時制は同様に決定されます。これらの表現では、S2の時点から見てS1はいつも未来に起こるため、実際には過去に起こった出来事であっても、S1は常に非過去形になります。

(例文9-10)

「[6] S1 時(に)S2」の表現で、S1とS2がどちらも行動や動作を表し、それらが時間的に前後して起こる場合も、この規則が使われます。下の13と14のように、S1の「日本に行く」ことがS2の「お土産を買う」の前に完了している場合は「日本に行く」は過去形になります。一方、11や12では、「日本に行く」ことが「お土産を買う」前に完了していないので「日本に行く」は非過去形になります。

(例文11-14)

次の例文でも、S1の時制はこの規則に従って決まっています。

(例文15-18)

「[11] S1間、S2」と「[12] S1間に、S2」では、S2が起こった時点でS1はまだ継続しており完了していないので、S1は非過去形になります。また、S1が動作動詞の時は、動作が継続していることを示すために通常「~ている」の形になることにも注意してください。

(例文19-21)

これは、「[6] S1 時(に)S2」でS1が時間の幅のある状態を表す場合も同様です。

(例文22-23)

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[確認問題] GP10-3 [2]

括弧の中の正しい方を選んで、文を完成させなさい。

(問題1-8)

[ここで、練習編の練習40をしてみましょう。]

[2] 目的を表す「~ために」「~ように」

「[15] S1ためにS2」と「[16] S1ようにS2」の主要な用法は、S1がS2の目的や目標だということ表すことです。この用法で「~ために」「~ように」が使われる時は、S1は常に非過去形になります。また、「~ために」の文では、S1とS2の動作主が同一でなければなりません。

(例文1-2)

この2つの表現はどちらも目的を表しますが、置き換え可能ではありません。大きな違いは「~ために」はS1がS2の動作主の意図的な動作や行動であるのに対し、「~ように」はS1がS2の動作主にとって望ましい結果ではあるが、その結果はS2の動作主の意図的な動作や行動ではないということです。

例えば、下の3では、S1の「相談する」はS2の動作主「私」の意図的な行動を、4ではS1が「両親が心配しない」という「私」にとって望ましい結果(しかし「私」自身の意図的な行動ではない)を表しています。同様に、5と6はS1が「書いたものを見ないで発表する」という意志的な行為と「いい成績が取れる」という望ましい結果を表すという違いから「ために」と「ように」が使い分けられています。7の「日本語が上手になる」も望ましい結果だと考えられます。

(例文3-7)

節ではなく名詞が前接する場合には、「~ために」は主節の行動によって利益を受ける対象を表すことがあります。

(例文8-9)

また、「~ために」には理由を表すという用法もあります。意味的には「~から」「~ので」に近いですが、「~ために」を理由を表すために使うと、よりフォーマルなニュアンスになります。「~ために」に過去形の動詞や形容詞が前接している場合は、この表現はいつもこの意味になります。

(例文10-11)

「~ために」に前接続する要素が過去形の動詞や形容詞ではない場合は、下の例ように、「~ために」が目的を表すのか理由を表すのかが文からだけでは判断できない場合も存在します。その場合は、意味は文脈から判断されます。

(例文12)

なお、ここで勉強した「~ように」は、GP9で学習した文末表現「~ようだ」とは違う表現なので、注意してください。

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[確認問題] GP10-3 [3]

括弧の中の正しい方を選んで、文を完成させなさい。

(問題1-7)
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[p.182] Quick Note: ~ようにする

「〜ように」は動詞「する」が後接して「〜ようにする」という形で使われることがあります。文字通りの「do so that ~」という意味が、この用法では「be sure to ~」や「make sure to ~」という意味に解釈されます。

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⇒ 次の文を完成しなさい。

(問題1-3)

[4] 条件を表す「~たら」「~ば」「~なら」「~と」

日本語には、条件を表す表現が複数存在します。

(表現17-20)

(例文1)

この4つのどれでも使える場合もあります。

しかし、これらの表現の意味は全く同じではなく、ある表現しか使えない場合も存在します。一番使用範囲が広いのは「[17] ~たら」です。

(例文2-3)

文を作る時は「~たら」を中心に使いながら、下のような「~たら」が使えない場合や他の表現を使った方が自然だという場合に注意するといいでしょう。

1.「19. ~なら」しか使えない場合

「~たら」「~ば」「~と」は基本的に、S2がS1の後で起こる場合の相互関係のみを表します。S1がS2の後で起こる場合には「~なら」しか使えません。

(例文4-7)

2.「18. ~ば」を使うのが最も自然な場合

S2が望ましい事柄を表し、S1がそれが成立する条件を表す場合は、「~たら」を使っても間違いではありませんが、「~ば」を使った方が自然です。

(例文8-10)

バ形は以下のように作ります。

動詞(肯定) 動詞のグループに関わらず、語末の /-u/ を /-eba/ に変える。 (例)

動詞(否定)イ形容詞(肯定/否定)だ(否定) 語末の /-i/ を /-kereba/ に変える。 (例)

だ(肯定) 

Verbs (affirmative)

I-adjectives

Negative forms of verbs, i-adjectives &「だ」

「だ」(affirmative) バ形はありません。代わりに「なら」が使われます。 (例)

名詞とナ形容詞に使われる非過去肯定形の「だ」にはバ形がなく、代わりに「~なら」が使われるため、「~なら」は肯定的な結果をもたらす事柄を取り立てる下のような時にも使われます。

(会話例11)

3.「20. ~と」を使うのが最も自然な場合

S1の後に、常に、または通常S2が続くというような状況を表す時には、「~と」を使うのが最も自然です。

(例文12-13)

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[確認問題] GP10-3 [4]

A. それぞれの語に正しい形を入れて、次の表を完成しなさい。

(問題1-6)

B. 括弧の中の最も適切なものを選びなさい。

(問題1-6)

[ここで、練習編の練習41をしてみましょう。]

[5] 逆説と対照を表す「~けど」「~が」「~ても」「~のに」

逆接や対照を表す表現の中で最も使用範囲が広いのは「[2] S1 けど S2」と「[3] S1 が S2」です。「[2] ~けど」はくだけた話し方の会話で使われます。加えて「~けど」は授業など身近で日常的な場面では丁寧体の会話でも使われます。「[3] ~が」は「~けど」よりもフォーマルな表現で、ゲストスピーカーとして講演する時など、よりフォーマル度が高い場面で話す時に使われます*

(例文1-3)

「[21] S1 [テ形] も S2」は仮定条件としての逆接や対照を表す表現です。一方、「[22] S1 のに S2」は実状の逆接や対照を表します。

(例文4-5)

4つの表現の中で仮定条件としての逆説や対象を表すのは「〜ても」だけです。上の例文4の「〜ても」を「~けど」や「~が」の表現に置き換えると、例文5とほとんど同じ意味になり、「~ても」が持つ仮定条件としての意味は失われます。

(例文6)

また、「〜ても」はS1に疑問詞を含んで使われることもよくあります。この場合は「S1に関係なくS2」のような意味になります。

(例文7-8)

[*186ページ脚注]

逆接や対照を表す表現としては、新しい文の文頭で使われる接続詞「でも」も勉強しました。例えば、上の1から3の文は文法的には全て「でも」を使って2文で言うこともできます。(例:この映画は面白い。でも、あまり知られていない。)フォーマル度に関しては、「でも」は「~けど」ほぼ同じレベルにあるので、使用場面はくだけた話し方での会話や身近な日常場面での会話に限った方がいいです。よりフォーマルな文頭に使う接続詞としては「しかし」という表現があります。

「疑問詞+だ」がこの形で「疑問詞+でも」として使われることもよくあります。(ここの「で」は「だ」の テ形です。)

(例文9-10)

「~のに」と「~けど」「~が」の違いは、「~のに」は実状の逆接や対照を表すため、原則的に「~のに」のS2は常に事実を表すということです。下の例のようにS2が勧誘や依頼などの場合は「~のに」は使えません。

(例文11-12)

また、多くの場合、「~のに」にはS2で表される事実に対する話者の驚きや不満が含意されます。例えば、下の例では「~けど」や「~が」も使えますが、「~のに」を使用することで、話者が状況に対してする上記のような気持ちを抱いているということが含意されています。

(例文13-14)

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[確認問題] GP10-3 [5]

A. 括弧の中の正しい方を選んで、文を完成させなさい。

(問題1-4)

B. 次の表現に当たる日本語を書きなさい。

(問題1-11)

C. 下の文を日本語に訳しなさい。

(問題1-9)

次の例文を見てみましょう。

(例文1-3)

例文2や3の方が例文1より質問の内容がより具体的ですが、例文1と違って、具体的な情報を聞く文は2文に分かれています。この2文を1文での質問文にするには、日本語ではS1をS2に埋め込むことになります。

(例文4-5)

このような埋め込み文を作るためには、次の4つの規則に注意してください。

  1. S1の述部は普通形になります。ただし、元の文は質問文であるために助詞「か」はそのまま残ります。
  2. S1が「はい/いいえ」の二者択一疑問文の場合は、埋め込まれた時に、特によりフォーマルな場面で末に「どうか」が追加されることがあります。(例文5、6、7参照)ただし、よりくだけた話し方での会話や書き物ではあまり使われません。
  3. S1の述部がナ形容詞か名詞に続く「だ」の場合、この「だ」は埋め込まれた文ではよく省略されます。(例文7、10参照)
  4. 元のS1内の主題は、埋め込まれた文ではたいてい主題ではなく、主語として扱われます。つまり、元のS1で助詞「は」でマークされる主題は、埋め込み文では助詞「が」でマークされる主語に変化します。これは、140ページのGP8-1で勉強した名詞修飾節内での規則と同じです。

前のページで学習した規則がどのように使われているかに注意しながら、下の追加の例文を見てみましょう。

(例文6-10)

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[確認問題] GP10-4

次の日本語の文を英語に合うように変えなさい。

(問題1-8)

[ここで、練習編の練習42をしてみましょう。]

文法ポイント11. その他のよく使われる表現 [pp.192-212]

前のセクションまでで、ほぼ全ての日本語の基本文法と大多数の高頻度の表現を学習しました。ここでは、まだ導入されていない他の高頻度の表現を勉強します。

これまでのセクションで「の」「に」「も」について様々な用法を勉強しましたが、これらにはまだ勉強していない追加の用法があります。ここでは、この3つの新しい用法に加えて、「も」と対比される「しか」という新しい助詞についても勉強します。

[1] 名詞を置き換える「の」

「の」に関しては「Noun1 の Noun2」の形で使われる助詞としての機能と名詞化のための機能を勉強しましたが、これらに加えて「の」には、前出の名詞を置き換えるという機能もあります。

(例文1)

上の例文1の2文目は元々「もう少し小さいTシャツがありますか」ですが、1文目に出てくる「Tシャツ」との繰り返しを避けるために、名詞「Tシャツ」が「の」で置き換えられています。この文脈では、この「の」は英語の「one」に当たります。

(例文2)

この場合は元々の「あれはイーさんのかばんです」の「かばん」を置き換えるわけですから「あれはイーさんののです」となると考えるのが自然ですが、置き換えの「の」と助詞「の」が続いた場合は「の」は1つになります。(これは、英語で「Yi-san’s one」という代わりに「Yi-san’s」とだけ言うのに似ています。)

「の」がどのように使われているかに注意しながら、次に会話を見てみましょう。

(会話例3-4 4の状況:AとBが店でかばんを見ている。)

文脈から明らかな場合は、言語的に会話内で明示的に言及されていなくても、名詞を「の」で置き換えることができます。上の4の会話はAとBがかばんを見ているという状況のため、「かばん」という言葉を事前に使っていなくても、「かばん」を「の」で置き換えることができます。

[2] 移動の目的を表す「に」

助詞「に」に関しては、その機能の1つとして移動の目的地を表すことを勉強しましたが、「に」には移動の目的を表すという機能もあります。この場合、目的は動詞のマス形語幹(マス形から「ます」を除いた部分)で表されます。

(例文1-3)

この場合の図書館に行く目的は、例文2では「本を借りること」、例文3では「本を返すこと」です。助詞「に」はこれらの動詞のマス形語幹に後接して、それらが移動の目的であることを表しています。この目的の助詞は「来る」や「帰る」のような他の移動の動詞とも使えます。

(例文4-5)

目的の助詞「に」を使った文は、180ページで学習した「~ために」を使って言い換えることもできます。

(例文6)

助詞「に」で目的が表せるのは、動詞が「行く」「来る」「帰る」などの移動を表す場合のみです。その他の場合は「~ために」を使ってください。

[3] 量を強調する「も」と「しか」

以前に類似を表す助詞「も」を勉強しましたが、この助詞には、量の表現に後接して、その量が特に多いという話者の印象を強調するという用法も存在します。

(例文1-2)

「5万円」は数量詞なので助詞を使う必要はありませんが(直接目的語の助詞「を」は「お金」をマークします)、2の文での助詞「も」はもらった金額を強調し、話者が「5万円」は大きい金額だと思っているということを表します。

逆に「量が少ない」ことを強調するためには「~しか + [negative]」という表現を使います。英訳はたいてい肯定文になりますが、この表現を使う時は述部が常に否定形になるので注意してください。

(例文3)

なお、類似した高頻度表現に「~だけ」という助詞もあります。

(例文4)

どちらの表現を使ってもいい場合も多いですが、量の少なさが中心的な意味になる場合は「~しか」を使った方がいいです。例えば、下の状況では「10円だけあるから」というのは不自然です。

(例文5)

また、「だけ」と「しか」を一緒に使うこともあります。例えば、下の6は自然な文で、意味的には上の3の文とほとんど違いがありません。

(例文6)

さらに「しか」は、数量詞だけでなく、他の助詞と同じように名詞に後接させて使うこともできます。この場合も「しか」は、話者が「しか」の前の名詞が量的に少ないと考えているということを強調します。ちなみに、元の助詞の置き換え規則は、47ページで勉強した助詞「も」での規則と同じです。「は」「を」「が」は置き換え、それ以外の助詞は残し「しか」を後続させるという規則を使ってください。

(例文7-9)

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[確認問題] GP11-1

各括弧に「の」「に」「も」「しか」のどれかを入れて、文を正しく完成しなさい。

(問題1-9)

[ここで、練習編の練習43と44をしてみましょう。]

「方」は「方向」や「方法」という意味の名詞で、常に他の要素に修飾される形で使われます。

(例文1)

この元来の意味から派生して、「方」は話者がものを指し示す文脈でもよく使われます。

(例文2-3 話者は手元のかばんと部屋の逆側の棚にあるかばんとを比較している)

3の文は、文字通りには「I like that direction」という意味ですが、この状況では「the bag over in that direction」を指すことになります。このように「方」が使われる場合、その文は通常、2つのものが比較されていて、あるものをもう1つのものと対照や対立させて言及しているというニュアンスを帯びることになります。

他の例も見てみましょう。下のどちらの文も他の人との比較が含意されていて、英語の対照表現「~er; more ~」に当たる意味を含んでいます。

(例文4-5)

また、「方」は2人の人や2つのものを比べる質問にも使われます。

(例文6)

比較の意味をさらに明確にするために、この表現は助詞「~より」や副詞「もっと」ともよく一緒に使われます。

(例文7-8)

8では「もっと」がなくても文の意味は大きくは変わりませんが、「もっと」があることで比較の意味が強くなっています。

「方」は品詞としては名詞なので、他の名詞と同じように、「修飾節[普通形] + 方」という形で修飾することもできます。

(例文9-10)

また、「方」は「~方がいい」という形でもよく使われます。

(例文11-15)

なお、上の12から分かるように、肯定形の動詞節が「方がいい」に前接する場合、その節はたいてい過去形になるので注意してください。

[p.197] Quick Note: 3つ以上のものを比較する「一番」

「方」は2つのものの比較に使われますが、3つ以上のものの比較には、88ページの例文でも勉強した「一番」という副詞を使います。「一番」は副詞なので助詞を後接させる必要はありません。下の文とウェブサイトの追加の例文を見てみましょう。

(会話例1-3)

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[確認問題] GP11-2 / Quick Note

A. 次の日本語の文を英語に合うように変えなさい。

(問題1-6)

B.「方」か「一番」を使って、答えに合う質問を書き、会話を完成しなさい。

(問題1-6)

[ここで、練習編の練習45をしてみましょう。]

あなたが「一番」というとてもいいレストランを見つけて、それについてクラスメートに話したいとします。このような場合、恐らく下のような文で質問したくなるでしょう。

(例文1)

すでに色々なレストランについて話しているという状況での発話あれば、この質問の意味は明確だと言えます。しかし、そのような状況以外では、この文は知りたいことを聞くのに自然で明確な文ではありません。その理由は、この状況では、会話相手は「一番」がレストランであるということを知る術がないため、何についての「一番」のことか分からないからです。聞き手がそれを知らないかもしれないと考えられる場合は、話者は「AというB」という表現を使って、AがBであること(この場合「一番」がレストランであること)を質問に明示的に含む必要があります。

(例文2)

この「~という」は、引用の助詞「と」と動詞「言う」からなる「~と言う」という表現からできていますが、この文法機能で使われる場合、元の意味は薄れているため「言う」も漢字ではなくひらがなで書かれます。また、Aには特定の名前、Bには一般名詞が来ることにも注意してください。下の文とウェブサイトの追加の例文を見てみましょう。

(例文3-5)

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[確認問題] GP11-3

下の日本語の文を英語に合うように変えなさい。

(問題1-3)

[ここで、練習編の練習46をしてみましょう。]

これまでのセクションで、マス形語幹(マス形から「ます」を除いた部分)を使った3つの表現(「~そう」(164ページ)、「~ながら」(177ページ)、「~に行く/来る/帰る」(193ページ))を学習しましたが、この形は他の高頻度の表現にも使われます。ここでは、それらの表現を勉強します。

[1] ~すぎる/始める/終わる/続ける

動詞の中には、他の動詞に「動詞1[マス形語幹] + 動詞2」の形で後接して、その意味を付加するものが存在します。

すぎる

よく使われる動詞の1つは「すぎる」で、これは程度が過度だという「too much」の意味を表します。この動詞は、この意味で使われる場合、ほとんどいつも他の要素に後接する形で使われ、単独で使用されることはほとんどありません。この表現は動詞だけでなく形容詞と共に使われることもあります。この場合、形容詞の形は「~そうだ: looks ~」と使う形と同じです。各品詞の形は下のようにまとめられます。

動詞 マス形語幹 (活用例 例文1-2)

イ形容詞 普通形の非過去肯定形から語末の「い」を落とす (活用例 例文3-4)

ナ形容詞 普通形の非過去肯定形から「だ」を落とす (活用例 例文5-6)

否定形 ナイ形の末の「い」を「さ」に替える* (活用例 例文7-8)

また、「すぎる」の他に、それぞれ動作の開始、終了、継続を表す「始める」「終わる」「続ける」という動詞も、他の動詞のマス形語幹に後続する形でよく使われます。

(例文9-11)

[*201ページ脚注]

語末の「い」を「すぎる」で置き換える「さ」を使わない形も存在します。ほとんどの場合、この形を使っても間違いではありませんが、ある特定の動詞と使った時に不自然だと感じられることもあるので、この教科書では「~なさすぎる」の形に限定して練習します。

[2] ~やすい/~にくい

接尾辞「~やすい」「~にくい」はそれぞれ、前接する動詞がやさしいことと難しいことを表します。どちらもイ形容詞の活用をします。「やすい」「にくい」の元の意味はそれぞれ「cheap」「hateful; detestable」ですが、接尾辞として使用される場合は、元の意味は強く残っていません。

(例文1-4)

「~やすい」「~にくい」はイ形容詞として機能するので、動詞が前接してもその対象が直接目的語になることはありません。代わりに、その動詞の目的語は、下の1や2のように文の主語や主題になります。

(例1’-2’)

これらの意味はイ形容詞の「やさしい」「難しい」やナ形容詞の「簡単」を使って表すこともできます。

(例文5-6)

これらの表現はほとんどの場合で置き換えが可能ですが、容易さ、困難さの原因や結果に心的・感情的な要因が伴う場合は、たいていこれらの接尾辞の使用が好まれます。

(例文7-8)

逆に客観的・具体的な事柄の達成の可能性を判断する場合には、この表現は使われません。例えば、次の文で「~やすい」「~にくい」を使うのは非文法的です。

(例文9-10)

[3] ~方

GP11-2で「方向、方法」を意味する名詞「方」を使った比較の表現を勉強しましたが、ここでは同じ「方」(読み方は「ほう」ではなく「かた」)を動詞のマス形語幹に後続させて、何かをするための手段や方法を表す表現を勉強します。

(例文1-3)

「動詞[マス形語幹]+方」は名詞句として機能するので、動詞が前接してもその対象が直接目的語になることはありません。上の2や3から分かるように、その動詞の目的語は、他の名詞としてこの名詞句を修飾します。

(例2’-3’)

スル動詞(例:勉強する、発音する)の場合は、「する」の前の要素が名詞として使われます。(例:勉強する→勉強をする→勉強のし方)また、「~方」が「する」と使われる場合は、「し方」とも「仕方」とも書かれるので注意してください。

(例文4-5)

最後に、移動の目的地や動作が向けられる対象を示す助詞「に」は、この表現とは一緒に使えないという規則もあるので注意してください。この場合は、同じ意味を表す助詞「へ」を使わなくてはいけません。例えば、「go the the airport」は「空港に行く」「空港へ行く」のどちらも正しいですが、「~方」の表現を使う場合は「空港への行き方」としか言えません。

(例文6-7)

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[確認問題] GP11-4

括弧内の語と「~すぎる」「~始める」「~終わる」「~やすい」「~にくい」「~方」のどれか1つを使って空欄を埋めなさい。使用表現の形を変えなくてはいけないものもあります。

(問題1-10)

[ここで、練習編の練習47と48をしてみましょう。]

GP6でテ形を使って2文をどのようにつなげるかについて勉強しました。しかし、テ形では必ずしも2つ、またそれ以上の行為や出来事の関係が正しく言い表せない場合が存在します。ここでは、テ形の他に、このような状況で使用できる表現を勉強します。

[1] AたりBたりする

GP6で次のような文を勉強しました。

(例文1)

この文では「図書館に行く」と「日本語を勉強する」という2つの行動がテ形でつなげられています。それでは、以下のような文はどうでしょうか。

(例文2)

文法的にはこの文には間違いはありません。しかし、一般的に、このようにAとBという2つの行動をテ形でつなげた文には、以下のような含意があります。

  • 行動は「A→B」(2の文では「日本語を勉強する→新聞を読む」)の順に行われる。
  • 文の動作主がすることはAとBだけ。(上の文では「日本語を勉強すること」と「新聞を読むこと」だけ。)

これらの含意が実際の状況と一致する時、例えばある特定の日の時系列順に起こる出来事について話している場合は、上の例にあるようにテ形を使っても問題はありません。しかし、自分が図書館でよくすることを話しているというような状況や、行動が文中にあるものだけには限られない場合、または行動がいつも同じ順序で行われるわけではないような場合は、このような文は適当ではありません。このような場合は、代わりに「AたりBたりする」という形を使うのがより自然です。

(例文3)

この表現は以下の点でテ形の文と異なります。

  • 「~たり」の形は普通形の過去肯定形(タ形)に「り」を加えた形
  • 時系列の順序は含意されない
  • 動作主が、AとB以外に、別の行動もするということを含意する

これらの相違に注意して、下の4のB1とB2の答えを見てみましょう。

(会話例4)

B1の答えは、図書館で「日本語を勉強する、新聞を読む」という2つの行動を行い、それに加えて図書館で他の行動もするかもしれないことを表しています。一方、B2の答えは単純に「図書館に行く、日本語を勉強する、新聞を読む」という別々の3つの行動を(さらに加えて恐らく他の行動も)行うということ、そして、それらの間の時系列の順序は分からないというを表しています。ウェブサイトにある追加の例文もチェックしてみてください。

[2] Aし、Bから

日本語で理由を表す表現として「~から」や「~ので」を勉強しました。

(例文1)

では、上の文に「日本語の試験の勉強をしなくてはいけない」というもう一つの理由を追加したい場合はどうすればいいでしょうか。上の [1] で勉強した「AたりBたりする」を使って「宿題がたくさんあったり日本語の試験の勉強をしなくてはいけなかったりするから、今日は忙しいです。」と言っても間違いではありません。しかし、下の例のように言うと、より自然です。

(例文2)

ここで使われている「~し」は複数の行動や出来事を並列する表現の1つで、この文のように、理由を並べる時によく使われます。「~し」の前には普通形が使われることが多いです。

(例文3-5)

また、「~し」はある意見や主張や状況に対して複数の説明を並べるような文脈でも使われ、この場合、必ずしも理由を明確にする「~から」や「~ので」のような表現と一緒に使われなくてはいけないわけではありません。下の例とウェブサイトにある追加の例文を読んでみましょう。

(会話例6)

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[確認問題] GP11-5

「~たり」か「~し」を使って2文をつなげなさい。

(問題1-6)

[ここで、練習編の練習49をしてみましょう。]

GP9と10で以下の表現を勉強しました。

(表現例)

このセクションでは、これらの表現を名詞修飾節でどのように使うかについて学習します。

[1] 名詞の前で使われる形

名詞を修飾する場合、「みたい」「よう」「そう」はナ形容詞が名詞を修飾する規則に、「ため」は名詞が名詞を修飾する規則に従います。

(接続規則 例文1-4)

[2] 名詞を修飾する際の意味

1. ~みたいな/~ような + Noun

「~みたいな/~ような + Noun」の最も一般的な用法は何かを他のものに例えて比喩的に表現する用法です。例えば、上の1と2では、話者は「なりたい人」「住みたい町」をそれぞれ「田中さん」「京都」と比較して表現しています。各文から「~みたいな/~ような + Noun」をなくした文は、次のページの例のように、全く違う意味になるので注意してください。

[*208ページ脚注]

「~よう」に関しては「S1ようにS2」の形で目的を表すことも勉強しましたが、このセクションで勉強する「~ような+Noun」の表現に目的の意味はありません。

(例文1-2)

「~ような」は「この」「その」「あの」「どの」という指示詞を伴って使われることもよくあります。この場合は「~みたいな」は使われません。

(例文3-4)

「このような」「そのような」「あのような」「どのような」は短縮して、それぞれ「こんな」「そんな」「あんな」「どんな」という形でも頻繁に使われます。

(例文5-6)

2. ~そうな + Noun

「~そうだ」が文末表現として使われる場合と同じように、「~そうな + Noun」は「話者の直接的な知覚情報に基づいた印象からの推察」という意味を表します。「~そうな」に前接する形は164ページで文末表現として勉強した形と同じで、イ形容詞は語末の「い」を落とした形、ナ形容詞は「な」を落とした形、そして動詞はマス形語幹です。

(例文7-9)

3. ~ための + Noun

「S1 ために S2」の場合と同じように、「~ための + Noun」の「ため」の前の部分は目的や利益を受ける対象や標的とする対象を表します。

(例文10-12)

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[確認問題] GP11-6

英語に合うように次の日本語の文を変えなさい。

(問題1-9)

形容詞は名詞を修飾する語ですが、語末をイ形容詞は「い」から「く」に、ナ形容詞は「な」から「に」に替えることによって、動詞を修飾することができます。これは、動詞が行われる様態を表す副詞的な用法です。

(例文1-2)

上の1-aと2-aでは、「早い」「丁寧な」という形容詞がそれぞれ「時間」「話し方」という名詞を修飾しています。一方、1-bと2-bでは、それらの語が「早く」「丁寧に」という副詞形で使われ、「起きる」「話す」という動詞がどのように行われるかを表しています。ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

GP11-6で勉強した「~みたいな」「~ような」「~そうな」という表現もナ形容詞として機能するので、ナ形容詞の副詞的用法を使って動詞を修飾することができます。

(例文3-5)

また、この形容詞の副詞的用法は、150ページで勉強した動詞「なる」と「to do」を意味する動詞「する」ともよく使われます。

(例文6-8)

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[確認問題] GP11-7

括弧内の正しい方を選びなさい。

(問題1-9)

[ここで、練習編の練習50をしてみましょう。]

文法ポイント12. 丁寧さ・フォーマル度を使いこなす [pp.213-240]

GP2で学習したように、日本語は第一に普通形と丁寧形という文末の形の対照によって丁寧さをコントロールしますが、ここでは、丁寧さをコントロールする際に注意が必要な他の要因について、より詳しく勉強します。

日本語では、他者のために行われた行動を言い表す際に、その恩恵が誰から誰に授受されたのかを明確にするために、通常「あげる」「くれる」「もらう」という授受動詞を使います。

(例文1-4)

2の文で本動詞として使われている「くれる」が、4の文では「買う」の補助動詞として使われていることに注目してください。この補助動詞は「アイスクリームを買う」という行動が他者によって話者のために行われ、話者が恩恵を受けたということを話者が認識し感謝しているということを表しています。3の文でも「友達が私にアイスクリームを買った」という同じ状況が表されていますが、友達の行動が話者のために行われ、話者が恩恵を受けたということが話者によって言語的に表現されておらず、失礼に聞こえてしまいます。このセクションでは、まず3つの授受動詞の本動詞としての使い方を勉強し、その後で補助動詞としての用法を学習します。特に他者からの恩恵について話す時に、発言が恩知らず、または失礼に聞こえてしまわないように、この補助動詞としての用法を身につけることは重要です。

[1] 本動詞としての授受動詞

日本語には主な授受動詞として「あげる」「くれる」「もらう」という3つの語があります。

(例文1-8)

これらの授受動詞の使用の際には次の点に注意してください。

1.「くれる」と「あげる」の違い

「くれる」は「誰かが自分(話者)に、または自分のソトの人が自分のウチの人に何かをくれる」という場合にのみ使われます。他の場合は「あげる」が使われます。ウチの人とソトの人の関係は文脈によって決定され、話者により近い関係の人やより関係が深い人がウチの人と見なされますが、場面や社会的な関係によっても変化します。例えば、家族のメンバーはほとんどいつもウチの人ですが、他の状況では、友達がウチの人で友達以外がソトの人となったり、自分と同じ会社で働く人がウチの人で自分と別の会社で働く人がソトの人と見なされたりします。

2.「あげる」と「くれる」の使用制限

前のページの1にある「くれる」が使われる場面では、より一般的な語の「あげる」は使えません。例えば、誰かが何かを話者にあげた場合には「くれる」を使わなければならず、「彼女は私に靴をあげました」という文は非文法的です。同様に、ソトの人がウチの人に何かをくれる場合も「あげる」は使えません。「隣の人が弟にみかんをあげました」という文は非文法的です。

3.「もらう」の使用制限

「もらう」は話者が誰かに、または話者のウチの人がソトの人に何かをあげる場合には使えません。(この場合は「あげる」しか使えません。)また、「もらう」を使う時は、何かをあげる人が助詞「に」でマークされることにも注意してください。(ある特定の場面では助詞「から」が使われることもあります。これは「学校から奨学金をもらいました」のように与え手が人ではない時に特によく見られます。)

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[確認問題] GP12-1 [1]

授受動詞が正しく使われている文には〇を、正しくない文にはXを書きなさい。

(問題1-6)

[ここで、練習編の練習51-1から51-3をしてみましょう。]

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[2] 補助動詞としての授受動詞

「あげる」「くれる」「もらう」の授受動詞を補助動詞として使う場合は、本動詞をテ形にして、その後に授受動詞を後接させます。どの授受動詞を使うかは、行動をする人を何かをあげる人、恩恵の受け手を何かをもらう人と見なし、本動詞として使う場合の規則に基づいて考えてください。

(例文1-4)

授受動詞を補助動詞として使用する際には次の点に注意してください。

1.「〜てあげる」の不使用

話者が自発的に恩恵を与える場合は、その状況を表す時に「〜てあげる」を使わない場合が多いです。これは恩恵の与え手を「〜てあげる」を使って明示することで、話者自身が恩恵の与え手であることを強調し、自画自賛している、または賞賛を受けたいと思っているというような意味合いを帯びてしまう可能性があるためです。例えば、次のような例では「〜てあげる」を使用することもできますが、意図的に使用しない場合が多いです。

(例文5-6)

2.「〜てくれる」と「〜てもらう」の意味的な違い

「〜てくれる」と「〜てもらう」は、ある同一の状況を表現するために使用が可能です。例えば、話者の両親が話者に車を買ったという状況を表す場合、下の2文はどちらも正しいです。

(例文7-8)

しかし、この2文には意味合いに違いがあります。「〜てくれる」を使った7の文は「車を買う」という行動が両親の自発的な行動であるというニュアンス、そして「〜てもらう」を使った8の文はその行動が話者が両親にお願いした行動であるというニュアンスを持ちます。この意味の違いに注意して、次の例を読んでみましょう。

(例文9-11)

3. 恩恵の受け手が文脈から明らかな場合

下の文では、恩恵の受け手が助詞「に」でマークされています。これは「あげる」「くれる」を本動詞として使った時に、何かをもらう人が「に」でマークされるのと同じです。

(例文12-13)

しかし、恩恵の受け手が文脈から明らかな場合は、この情報は明示される必要がなく、よく省略されます。例えば、下の文では括弧内の恩恵の受け手は省略されます。特に恩恵の受け手が文中で他の役割で(14では宿題がある人、15では自転車の所有者として)明示されている場合、助詞「に」を使って恩恵の受け手を明示すると冗長で不自然な文になってしまいます。

(例文14-15)

この受け手の情報を省略するという点は例文9から11でも同様です。

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[確認問題] GP12-1 [2]

A.「~てあげる」か「~てくれる」を使って各文を書き換えなさい。

(問題1-5)

B. あなたは誰かに下のことをしてもらいました。「~てもらう」を使って何をしてもらったか表しなさい。

(問題1-4)

[ここで、練習編の練習51-4から51-7をしてみましょう。]

最初にGP2とGP5でくだけた話し方での会話について勉強しました。ここではより自然なくだけた話し方のために、注意が必要な点についてさらに詳しく学習します。

[1] 表現の変化

引用の助詞「と」、「〜ては/〜では」、「〜てしまう/~でしまう」は、くだけた話し方でよく次のように変化します。元の表現のままでも間違いではありませんが、変化させるとフォーマルさのレベルが一致し、さらに自然に聞こえます。

1. と → って

(例文1-2)

2. ~ては → ~ちゃ/~では → ~じゃ

(例文3-5)

3. ~てしまう → ~ちゃう/~でしまう → ~じゃう

(例文6-7)

[2] 文末表現の省略 

くだけた話し方では、以下の文末表現ではよく省略されます。

1. ~てください

この表現では「ください」の部分は省略されます。

(例文1-3)

2. 引用の助詞「と」を使った表現

引用の助詞「と」を使った「〜と言っていた」「〜と聞いた」のような表現は、「と」のくだけた形「って」を使った後に、後続部分がよく省略されます。

(例文4-5)

3. ~なくてはいけない

この表現が文末で使われる場合は、「〜ては」のくだけた形「~ちゃ」を使った後に、後続部分がよく省略されます。

(例文6-7)

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[確認問題] GP12-2

下の会話は丁寧体で書かれています。くだけた話し方に変えなさい。

(問題1-4)

[ここで、練習編の練習52をしてみましょう。]

GP2で、文末を丁寧形にすることで丁寧さのレベルを上げ、話し相手へ敬意を表すということについて学習しました。しかし、この丁寧形の使用は、日本語の敬意を表す方法の中の1つでしかありません。敬意を示す言葉は日本語で「敬語」と呼ばれます。ここでは、他の敬語についても勉強します。

敬語の概要

敬語は敬語、謙譲語、丁寧語、丁重語、美化語という5つの種類に分けられます。

1. 尊敬語

話の話題になっている人物の行動・状態・持っているものなどを敬意を示す言葉で表すことにより、その人物に特別な敬意を表す表現

2. 謙譲語

話の話題になっている人物と関係がある自分自身の行動を謙遜を示す言葉で表すことにより、その人物に特別な敬意を表す表現

3. 丁寧語

丁寧な言葉で情報を伝えることによって話し相手に敬意を表す表現

4. 丁重語

自分や第三者の行動を丁重な言葉で述べることで、話し相手に特別な敬意を表す表現

5. 美化語

上品に言い表すために使われる表現

すでに勉強した文末での丁寧形の使用は上の3つ目「丁寧語」の1部だと分類されます。多くの場合、丁寧形の使用だけで、社会的に十分丁寧な文だと受け取られます。しかし、特に大人が目上の人(職場の上司、学校の先生、社会的に身分が上の人など)や知らない人と話す時は、丁寧形以外の敬語も状況に合わせて使用することが期待され、それをしないと失礼だと受け取られることもあります。日本語学習者の場合でも、初級のうちは敬語の不使用はたいてい問題になりませんが、日本語が流暢になるにつれて敬語を適切に使うことが期待されるようになるので、適切な敬語を覚えて、場面を考えながら練習することが大切です。

大まかに言うと、上の5種類の敬語は、何について話しているかによって使用が決まる表現(尊敬語・謙譲語)、誰に話しているかによって使用が決まる表現(丁寧語・丁重語)、そして、ぶっきらぼうな印象を避けるために使用され、どんな状況でも使われる表現(美化語)に分けられます。

尊敬語と謙譲語

このセクションでは、尊敬語と謙譲語という2つの種類の敬語を勉強します。どちらもある人物に関係することがらを特別な表現を使って言い表すことで、その人に敬意を表すという機能を持ちます。この2種類の敬語の違いは、尊敬語がある人物の行動や状態や持っているものなどを敬意を示す言葉を使って言い表すことでその人に敬意を表す一方、謙譲語はある人物に関係する話し手自身の行動を謙遜を示す言葉を使って言い表すことでその人に敬意を表すという点です。例えば、下の会話では、下線部は全て動詞「行く」の活用形や敬語(「いらっしゃる」は「行く」の尊敬語、「伺う」は「行く」の謙譲語)です。これらの表現が使われている場面に注目してください。

(例1 喫茶店で偶然会った上田先生と学生のイーさんが話している。(*「よろしい」は「いい」のより丁寧な表現です。))

(例2 学生のイーさんが上田先生の授業を一緒に履修している田中さんに話している。)

まず、bでは尊敬語も謙譲語も使われていないということに気が付いたでしょう。これは発話主の上田先生にとってイーさんは目下の存在(自分の学生)で、特別な敬意を表す必要がないからです。この場合、文末に丁寧形を使って丁寧に話せば十分だと言えます。

一方、イーさんが上田先生の行動について話している a と b では尊敬語が、イーさんが上田先生に関係のある自分の行動、つまり先生のオフィスに行くという行動について話している c と f では謙譲語が使われています。

なお、e もイーさん自身の行動を述べているにも関わらず、ここでは謙譲語が使われていないということにも注意してください。これは f の「先生のオフィスに行く」という先生に関係する行動と違い、e のイーさんの「大学に行く」という行動自体は先生に関係がないためです。

[1] 尊敬語

前のセクションで見たように、尊敬語は、ある人物の行動や状態や持っているものなどを敬意を示す言葉を使って言い表すことで、その人に敬意を表します。使用頻度の高い動詞には、下の表にあるような特別な動詞があります。これらの中には例外的な活用をするものがあるので注意してください。例外的な活用は表の中では下線で表されています。

特別な尊敬語の動詞 (表)

上記以外の動詞は、マス形語幹を使って、以下のような規則で尊敬語を作ります。

尊敬語の形(一般的な規則)

特別な尊敬語の動詞がない場合 お + Verb [masu-stem] + になる (例文)

尊敬語は人物の状態や持っているものについて使われることもあるために、尊敬語には名詞や形容詞も存在します。最もよく使用される表現は名詞や形容詞に「お」と「ご」を加える形です。以下は特に使用頻度の高い表現の例です。(「お」と「ご」の選択については228ページのQuick Noteを見てください。)

(表現例)

これらの表現は敬意を表したい人物の状態や持っているもの(名前、仕事、家族など)についてのみに使用される表現で、大変丁寧な印象を与えます。

また、これらのように基本形から作られる尊敬語とは違い、全く違った語を使う表現も存在します。以下は使用頻度の高い表現です。

(例)

これらは尊敬語なので、自分自身や自分とウチの関係にある人には使われません。以下の例でいつこれらの表現が使われているかに注意してください。

(会話例1-3 留学生が日本人にインタビューをしている。)

(会話例4-5 上田先生が学生のイーさんと話している。)

ウェブサイトにある追加の例文もチェックするようにしてください。

[2] 謙譲語

尊敬語と対照的に、謙譲語はある人物に関係する話し手自身の行動を謙遜を示す言葉を使って言い表すことで、その人に敬意を表します。尊敬語と同様に、謙譲語にも使用頻度の高い動詞には下の表にあるような特別な謙譲語の動詞が存在します。

特別な謙譲語の動詞 (表)

上記以外の動詞は、マス形語幹を使って、次のページにある規則で尊敬語を作ります。これらの形は尊敬語の形と似ているので注意するようにしてください。

[*226ページ脚注]

「行く、来る」の意味での「伺う」は話し手の目的地が敬意を表したい人物の場所(例:先生のオフィス、上司のお宅)の時にのみ使われます。また、「聞く」の意味での「伺う」が意味するのは「to ask」だけで、「to listen」の意味はありません。(例:先生に伺います)

謙譲語の形(一般的な規則)

スル動詞以外の動詞 お + Verb [masu-stem] + する (例文)

スル動詞 お/ご + [Verbal noun*] + する (例文)

「Verbal noun」はスル動詞の「する」の前の部分を表します。(例:「電話する」の「電話」)

謙譲語は、話し手が敬意を表したい目上に関係のある自分自身の行動について言及する時にのみ使われます。例えば、下の4つの全ての例で、話者が目上の人と話していたとしても、謙譲語が使われるのは1と3の文だけです。これは話者の行動が目上の人に関係があるのは1と3だけだからです。

(例文1-4)

また、頻度は多くありませんが、名詞が謙譲語の形で使われることもあります。この場合も、名詞は話者自身の行動の一部で、その行動は敬意を表したい人物に関係しているという点は同様です。(例:先生に対して書かれた手紙「先生へのお手紙」、上司に対してした説明「上司へのご説明」)これらの例から分かるように、名詞の謙譲語の形は「お」や「ご」を付加する尊敬語の形と同じです。
 

[p.228] Quick Note: 「お」か「ご」の選択

前のページで見たように、名詞や形容詞の尊敬語には、「お」が使われる場合と「ご」が使われる場合があります。使用規則は、原則的には和語(多くの場合、訓読みの漢字1字が含まれる語)には「お」、漢語(多くの場合、音読みの漢字2字で構成される語)には「ご」が使用されます。但し、例外も存在します。よく使われる漢語の中には、日常生活の中で使用頻度の高い語であるために和語のように扱われ、「ご」ではなく「お」が付加されるものがあります。例えば「お料理」「お電話」「お返事」「お大事に」のような表現です。ほとんどの場合には原則的な規則が当てはまりますが、上のような例外的な表現を学習した場合は注意して覚えるようにしてください。

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[確認問題] GP12-3 [2]

尊敬語か謙譲語を使って各文を書き換えなさい。9と10は尊敬語と謙譲語の両方を1度ずつ使います。

(問題1-10)

丁寧語と丁重語 

ここでは丁寧語と丁重語について学習します。これらは、敬意を表したい相手と話している場合にのみ使用される表現です。この2つには敬意の度合いと使用頻度に違いがあります。一般的に丁重語は丁寧語より敬意の度合いが高いですが、敬意を表したい人物の行動に言及する時には使用することができません。一方、丁寧語にはこのような制約はありません。

[3] 丁寧語

文末での丁寧形の使用の他に、敬意の度合いがさらに高い特別な表現を使った丁寧語も存在します。文末の丁寧形の使用とこれらの特別な表現は話し相手に対して敬意を表す表現で、誰の行動に対して使えるかという制限がないため、どちらも丁寧語に分類されます。以下は特によく使われる敬意の高い丁寧語です。

(敬意の高い丁寧語の表 指示詞 疑問詞)

これらの特別な表現は文末に丁寧形が使われる状況ではいつでも使用でき、丁寧形のみの使用に比べてよりフォーマルで敬意の度合いの高い印象になります。

また、丁寧語には、「ござる」(「ある」の丁寧語、丁寧形は不規則変化の「ございます」)と「~でござる」(「だ」の丁寧語、丁寧形は不規則変化の「~でございます」)という2つも存在します。これらは上の表現と似たフォーマル度で、同レベルの敬意を表す表現です。

(語の丁寧形への活用と意味)

ちなみに、これらは昔はよく使われる表現でしたが、現在では主に下の3ような慣用表現の1部として、またフォーマルなビジネス場面(接客場面など)での表現として使われることはあっても、他の場面ではあまり使われなくなりました。

(例文1-2 デパートの案内所で)

(例文3 上司に失敗を謝罪する)

[4] 丁重語 

丁重語は話している相手に敬意を示すという点で丁寧語と同じ機能が見られますが、丁寧語が何を言及する場合にも使えるのに対し、丁重語は敬意を表したい人物の行動を言い表す時には使用できないという違いがあります。この意味で、丁重語は謙譲語に似ていると言えますが、これらの間には重要な相違があります。謙譲語は自分の行動が敬意を示したい相手に関係がない時には使われない一方、丁重語にはそのような制限がありません。

丁重語の数はそれほど多くありませんが、以下はその中でも使用頻度の高い表現です。

特別な丁重語の動詞

(表)

丁重語と他の敬語との違いは下の例1に見られます。下線部は全て動詞「来る」の活用形や敬語です。

(会話例1 上田先生と学生のイーさんがバス停で話している。)

まずは、上田先生もイーさんも文末に丁寧形を使って丁寧に話していますが、イーさんだけが丁重語(b と e)を使っているということに注意してください。これは、イーさんは目上の上田先生と話しているため、丁寧形以上の敬意を表す必要があるからです。一方、上田先生にとってイーさんは学生なので、そのような丁寧形以上のレベルの敬語は必要ありません。

次に、イーさんが丁重語を使っているのは、自分の行動(ソウルから参りました)と第三者について話している時(バスが参りました)だけだということにも注意してください。上田先生の行動について話している時は、イーさんは丁重語ではなく尊敬語(どちらからいらっしゃいましたか)を使っています。敬意を表すべき対象の行動に、尊敬語ではなく丁重語を使ってしまうと、逆に失礼になってしまいます。表現の選択には気を付けてください。

最後に、イーさんが b と e で謙譲語「伺う」ではなく丁重語「参る」を使っていることも重要です。謙譲語と違い、丁重語は、目上の人と話している状況で自分か第三者の行動を言い表す時は、その行動が目上の人に関係があってもなくても使用できます。下の例は、この点を明確に表しています。イーさんの「勉強している」「釣りをする」「喫茶店に行く」という行動は上田先生と関係がないものですが、イーさんは丁重語を使っています。

(例文2-3 上田先生が学生のイーさんと話している。)

美化語

最後の敬語の種類はものごとを美しく上品に述べる美化語です。例えば、今までに勉強した「お金」「お茶」「お酒」「お正月」「お菓子」のような語は全て「お」で始まっていることに気が付いたのではないでしょうか。実は、これらの語はそれぞれ「金」「茶」「酒」「正月」「菓子」と「お」をなくした形で使うこともできます。

「お」がある表現とない表現の違いは上品さの度合いです。「お」がない表現は粗野でぶっきらぼうに聞こえることがある一方、「お」がある表現は柔らかく上品なニュアンスを与えます。尊敬語と謙譲語を含んだ他の敬語で同形で使われる接頭辞「お」と違い、美化語は特定の人物に敬意を表すために使われるわけではありません。実際には、以下のような会話でも普通に使われます。

(会話例1)

これは友達同士のくだけた話し方での会話で話の中に敬意を表したい人物が登場するわけでもありませんが、粗野でぶっきらぼうに聞こえるのを避けるために「お茶」「お金」という表現が使われています。特定の敬意の対象がないという意味で他とは異なりますが、上品さを高めるという意味で美化語も一般的に敬語の種類として扱われます。

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[確認問題] GP12-3 [3] [4] と美化語

A. 下線部を丁寧語か丁重語か美化語を使って置き換え、下の文をより丁寧な文に書き換えなさい。

(問題1-5)

B. あなたはフォーマルな場面で敬語を使って話しています。括弧内の正しい方を選びなさい。

(問題1-6)

敬語のまとめ

1. 各種類の敬語の使用頻度

5つの種類の敬語の中で、最も広く使われるのは丁寧語と美化語です。文末の丁寧形は丁寧な話し方をする必要がある場合は常に使用され、美化語はくだけた話し方の会話でさえも使われることがあります。この2種類の次には、尊敬語がよく使われます。尊敬語は、目上の相手の行動を言い表す時に使用されるのに加えて、大人同士の会話では、上下関係がない場合でも、大人の礼儀作法として、あまり親しくない人(例:職場関係の知り合いや初めて会った人)に使われることがあります。

(会話例1 川田さんがレストランで偶然あった職場の知り合い高田さんと話している。)

(会話例2 共通の友達の紹介で初めて会った大山さんと大川さんが話している。)

丁重語と謙譲語は他の敬語に比べて使用頻度が低いです。前者は目上の人と話す時やフォーマルな状況で人前で話す時(自己紹介や発表など)のみに使われます。後者は最も使用頻度の低い表現で、話し手が目上や敬意を表したい人物に関係のある自分の行為を言い表す時にのみ使われます。

2. 敬語の組み合わせ

節に2つ以上の動詞が含まれる場合(本動詞と補助動詞がある場合など)は、原則的に、そのうちの1つを敬語に変えるのがいい方法だと言えます。例えば、授受動詞が補助動詞として使われている場合は、通常それらの授受動詞が該当する敬語に変えられます。

(例文3-4)

「~ている」の場合は、本動詞を敬語にすることも「いる」を敬語にすることも可能です。

(例文5-6)

これらはどちらも自然な表現だと言えます。一方「先生はもうお帰りになっていらっしゃいます」のように本動詞と授受動詞の両方を敬語に変えるのは基本的には不必要だと考えられ、文脈によっては誤用と見なされる場合もあります。

3. 特定形の敬語の動詞の一覧表

次のページでは、このセクションで学習した敬語の中で、特別な表現がある尊敬語、謙譲語、丁重語の動詞を表にまとめています。(丁寧形の不規則変化の活用は括弧内で下線で表しています。)

実際には、敬語の使用には個人差もあります。例えば「いただく」が「食べる」の丁重語として使われたり、「いたす」が謙譲語として使われたりする場合もあるので、会話相手の敬語の使用には柔軟に対応する必要があります。表の分類にそって敬語を使用すれば、少なくとも自分の敬語の使用にかんしては間違いを避けることができます。

(特定形の敬語の動詞の表)

[ここで、練習編の練習53をしてみましょう。]

お願いをする、お礼を言う、謝るなどの社会的に繊細さが求められる行為は、適切な丁寧さで行うことが特に大切だと言えるでしょう。ここでは、前のセクションで勉強した知識を使って、これらの行為をより適切に行うための注意点をみていきましょう。

[1] 誰かに何かをするように頼む

人に何かをするように頼む表現として「~てください」という表現を勉強しましたが、この表現は疑問文ではなく丁寧な命令に近いので、依頼するのが自然で文脈的に期待される下のような場面でしか使えません。それ以外の場面で使うと、失礼になる可能性があるので注意してください。

(会話例1)

相手が承諾するかどうか分からない場面でより適切に依頼するためには、「~てください」の表現の後に「ませんか」を加えて、この表現を疑問文に変えるのがより適切です。

(例文2)

この「~てくださいませんか」の表現は、前のセクションで勉強した、補助動詞としての授受動詞「~てくれる」と「くれる」の尊敬語「くださる」という2つの文法表現を使っています。この表現が作られる過程は以下の通りです。

(「~てくださいませんか」が作られる過程)

丁寧さのレベルは、この過程に調整を加えることで、より精密に調節することができます。例えば、尊敬語を除くことで丁寧さのレベルを下げたり、「~てくれる」の代わりに「~てもらう」を使用し、より間接的な依頼にすることで、丁寧さを上げたりするなどです。次のページの表では、1の表現が最も丁寧で、下に行くにつれて丁寧さの度合いが低くなります。なお、これは依頼のための表現なので、「~てもらう」を使う時は「~てもらえる」と可能形にする必要があることに注意してください。(可能形ではない文は、依頼ではなく、単純な事実確認の質問、または話し手が聞き手に一緒に何かをしようと申し出ているという意味になってしまいます。)

(表現の表)

これらの表現を文脈内で使った下の例文を読んでみましょう。

(例文3-8)

[2] 何かをする許可を求める

何かをする許可が得られるかどうかを聞く時は、GP6「テ形」で勉強した「~てもいい」の表現を使った質問がよく使われます。下はそのような質問の例で、一番丁寧な1の表現から下に行くにつれて丁寧さの度合いが低くなります。なお、1の「よろしい」は「いい」のより丁寧な形です。また、3より2の方が丁寧さの度合いが高くなる理由は、断定を避ける表現「~でしょう」(160ページ)の使用により質問のニュアンスが柔らかくなるからです。

(例文1-4)

話している相手に許可を与える決定権がある場合は、動詞の使役形と「~てくださいませんか」、またはその別形を組み合わせることで、適切な依頼をすることができます。例えば、誰かコンピュータを使いたい時は、下の例文の1つを使って、その人に許可を求めることができます。(「使う」が使役形「使わせる」になっていることに注意してください。)

(例文5-10)

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[確認問題] GP12-4 [1] [2]

A. 下線部により適当な依頼表現を使って、次の文を書き換えなさい。この問題ではイーさんはあなたの大変親しい友達だと考えて答えてください。

(問題1-2 親しい友人のイーさんに話している)

(問題3-4 先生に話している)

(問題5-6 あまり知らない同年代の人に話している)

B. 下のような状況でどのように言うか書きなさい。(田中さんはあなたの大変親しい友達です。)

(問題1-6)

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[3] 感謝や謝罪を表現する

お礼を言う時、謝る時は、どちらも「テ形 + 感謝/謝罪の表現」という形を取ります。下には、各表現の例が丁寧さの度合いが高い順にリストされています。

1. 感謝の表現

(例文1-3)

2. 謝罪の表現

(例文4-6)

お礼を言う表現では、恩恵が与えられたことを明示的に表すために「~てくれる」(216ページ参照)の表現が含まれていることに注意してください。この表現を含まずに「空港に来てありがとうございます」と言ってしまうと、他の部分でいくら丁寧な表現を使っても、不自然な文になってしまいます。また、謝る表現の最も丁寧な4の文では、よりフォーマルな丁寧語「ござる」(229ページ参照)が使われています。

上の表現で2つの時制の選択が示されているものは、実際には通常どちらの表現を使っても問題ありません。しかし、基本的な時制規則に沿って、習慣的な事柄や未来の事柄に関して感謝や謝罪を表す場合は非過去形、既に完了した事柄に関しては過去形を使うようにすれば、より自然に聞こえます。

例えばホストファミリーに対して以下のような文を言う場合は、ホームステイが継続している最中は非過去、最終日にお別れの挨拶をしている場面で言う場合は過去形を使います。

(例文7-8)

謝る時には、事柄に対する自分の後悔の念を明確にしたい場合は「〜てしまう」(125ページと219ページ参照)の表現を組み合わせることができます。

(例文9-10)

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[確認問題] GP12-4 [3]

下のような状況でどのように言うか書きなさい。(田中さんはあなたの大変親しい友達です。)

(問題1-6)

[ここで、練習編の練習54をしてみましょう。]